【読書家ライター厳選】歴史・時代小説おすすめ【ジャンル別:全12作品】

歴史・時代小説と言えば「堅苦しい」「読みづらい」というイメージをお持ちの方もいらっしゃると思います。私も最初はそうでした。

歴史・時代小説は「自由な想像の世界」と言えます。歴史上の史実は文献等から確認する事が出来ますが、その時に当事者が「実際はどう思っていたのか」はなかなか確認出来ません。この「当事者はどう思っていたのか」を自由な発想で書く事が出来るのが歴史・時代小説の最大の魅力と言えます。

小説とはそもそも想像力をもって創造力を作ること。
実在の人物を扱い、その史実に沿い、しかしながら自由な発想で「こう思ってたのでは」と描く歴史・時代小説は、「小説の真髄」と言っても過言では無いと思っています。

遥かなる過去への想像力を書き立ててくれる歴史・時代小説。古今の膨大な名作の中からほんの少しだけ、私のおすすめをご紹介させて頂きます。

ブログ運営者より:
この記事の本文は読書家ライター・楽観さんに書いて頂きました!

初心者にも読みやすい歴史・時代小説おすすめ

歴史・時代小説というと、どうしても会話が昔言葉になっていて読みにくい、専門用語がバンバン出てきて判りにくい、時代背景が判ってないと楽しめない等、ハードルが高いと思ってしまいがちですが、決してそうでは無いものも多々あります。会話をなるべく現代語っぽく書いたもの、本のなかで上手に説明をしており予備知識無しでも十分に楽しめるものもいっぱいあります。特に会話の部分が現代語っぽく書かれていればそれだけ感情移入も進むというもの。「極力会話部分が判りやすいもの」という基準で3作選んでみました。

初心者にも読みやすい歴史・時代小説おすすめ①:忍びの国(和田竜)

忍びの国 (新潮文庫)

嵐の大野智さん、石原さとみさん主演で映画化された作品です。映画を最初に見てから小説、というのもアリでしょう。歴史小説というジャンルの中では飛び抜けて読みやすいです。その理由は適度に現代語化された会話にあります。

「こんちわ」「あのさ」「伊勢の信雄がさ、攻めてくるんだよね」「戦に出ても、手当ては出ないんですと」

これは主人公・無門が「今度の戦さは戦っても手当てが出ない」事を知り、その事実を想い女であるお国に告げる場面の描写です。実際は戦国時代なので、こんなしゃべり方はしませんが、敢えて現代語風の言葉に置き換えているので非常にとっつきやすい訳ですね。

歴史小説の入門編としてぴったりの一冊です。

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初心者にも読みやすい歴史・時代小説おすすめ②:新撰組血風録(司馬遼太郎)

新選組血風録 新装版 (角川文庫)

こちらも何度か映像化されている作品です。一番最近だと2011年に永井大さんが土方歳三を演じてますね。

新撰組というメジャーな存在を題材にしており、かつ一話一話が独立した短編集になっていますので読みやすいことこの上ない作品です。

一話一話は短いのですが、読み応えは十分。作者である司馬遼太郎さんがもっとも脂が乗っていたとされる時期の作品ですから、ストーリー構成も文章も巧緻そのものです。キャラクターも一人一人が格別にキャラ立ちしており、「全員が主人公」と言ってもいいぐらいです。

一話完結のドラマを見ている気分になれますし、時間がない時に「今日はこの話し読んでみようかな」と一話ずつ読んでみるのも面白いと思います。

初心者にも読みやすい歴史・時代小説おすすめ③:真田太平記(池波正太郎)

真田太平記(一)天魔の夏(新潮文庫)

短編などでやや歴史小説に慣れてきたら長編小説に挑戦してみるのは如何でしょう。とっかかりの長編小説として、この『真田太平記』はお勧めです。

ゲームやドラマの世界でも有名な真田幸村。その父である真田昌幸、兄である真田信之を軸に、真田一族の興亡の歴史を綴ります。

こちらも1985年に映像化されており、「映像化された真田物の最高傑作」と言われてますね。テレビドラマ真田太平記で幸村を演じた草刈正雄さんが、人気を博した2016年の大河ドラマ「真田丸」で父の昌幸を演じたのは大きな話題になりました。

文庫版で全16巻と長編ですが、戦さ有り、恋愛有り、忍者の活躍有りと最初から最後まで飽きさせません。

戦国武将人気ランキングで常に上位に食い込む真田幸村が何故「日本一の兵(ひのもといちのつわもの)」と謡われたのか、本作を読めば全てが判ります。

中国の歴史・時代小説おすすめ

歴史・時代小説は何も日本のものだけに限りません。日本の作家が描いた古代中国の歴史にも傑作はたくさんあります。

中国と言えば中国三大奇書と言われる「三国志演義」「水滸伝」「西遊記」を見ても判るとおり、題材の宝庫。広大な大地に多彩な人間が暮らしており、そのスケールは日本の比ではありません。ぶっ飛んだ人間も多く、ユニークなエピソードにも事欠かない中国の歴史は正しく歴史小説の「題材の宝庫」といっても過言では無いでしょう。

そんな中国の悠久の歴史を堪能出来る小説を選んで見ました。

中国の歴史・時代小説おすすめ①:ものがたり史記(陳舜臣)

ものがたり 史記 (中公文庫)

中国には「正史」という言葉があります。これは「正しい歴史書」という意味で、全部で二十四の「正史」があり、かの有名な三国志も二十四の正史の一つに過ぎません。このうちの一番古い物が「史記」であり、これは不世出の歴史家と言われている司馬遷によって書かれています。

余談ですが、「司馬遼太郎」というペンネームは「司馬遷に遼(はるか)に及ばず」というところから付けられている名前です。

古代の伝説的国家・殷の時代から春秋戦国時代を経て、漫画「キングダム」でも有名な秦の始皇帝の時代、楚漢戦争と言われた項羽と劉邦の時代、そして漢帝国の時代までを、さくさくと読み進められる文章で綴ります。

中国の古代史を楽しみたかったらまずはこれ、という作品です。

中国の歴史・時代小説おすすめ②:敦煌(井上靖)

敦煌(新潮文庫)

莫高窟で有名なシルクロードの宝石・敦煌。北宋時代の敦煌を舞台にした小説で、こちらも1988年に佐藤浩市さん主演で映画化されています。

作家の井上靖さんは長年「西域」と呼ばれたシルクロードに憧れを持ち続け、この『敦煌』の他にも『楼蘭』『天平の甍』などの「西域物」と言われている作品を出されています。

西域に憧れを抱き続けた井上靖さんが始めてその地を踏む事が出来たのが50歳の時。恋焦がれ、憧れ続けた西域の地に初めて降り立った井上靖さんは路傍に泣き崩れ、暫く立ち上がる事が出来なかったというエピソードが残されています。ちなみに私も18歳の時に万里の長城の西の果て・嘉峪関まで行こうとしたのですが、切符売りの「没有」の冷たい一言で断念せざるを得ず、西域の玄関口・西安までしか辿り着けなかったという苦い記憶があり、西域は私にとっても「憧れの地」です。

井上靖さんがその情熱と憧れの全てを注ぎ込んで書き上げた『敦煌』。名作です。

中国の歴史・時代小説おすすめ③:後宮小説(酒見賢一)

後宮小説(新潮文庫)

「雲のように風のように」の題名でアニメ化されている『後宮小説』は酒見賢一さんのデビュー作です。デビュー作にして日本ファンタジーノベル大賞を受賞という快挙を成し遂げた作品です。

この『後宮小説』はとにかく「読んでみて下さい」としか言い様がありません。歴史家が歴史を振り返って記載した、という表現方法を取っていますが、最初読んだときはある程度歴史に詳しいと自負していた私でも「え?これ史実??フィクション???」と物凄く驚きました。

ファンタジーノベル大賞の選考会でも、井上ひさしさんに「シンデレラと三国志と金瓶梅とラストエンペラーの魅力を併せ有す、奇想天外な小説」と高く評価されています。

中国歴史物でありながら王道のファンタジーノベルであり、王道のファンタジーでありながら正統な中国歴史物のようでもあるという、奇想天外・摩訶不思議な小説です。

個人的なおすすめ作家の歴史・時代小説おすすめ

歴史・時代小説の大家と言われる作家さんは数多く、私自身も好きな「作家さんは?」と問われても片手では納め切れません。

ですが、「特定のジャンル」に絞って言えば、是非ともご紹介したい作家さんがおります。浅田次郎さんです。

浅田次郎さんと言えば直木賞を受賞した代表作『鉄道員(ぽっぽや)』でも知られているとおり、「泣かせの名人」です。その「泣かせの名人」が書いた「新撰組三部作」といわれる時代小説、『壬生義士伝』『輪違屋糸里』『一刀斎夢録』の三作をおすすめします。

【おすすめ作家】浅田次郎さんの歴史・時代小説①:壬生義士伝

壬生義士伝(上)

新撰組三部作・第一部と言っていい『壬生義士伝』は誠の武士・吉村貫一郎の生涯を描きます。浅田次郎さんは吉村貫一郎の激しい一生を通じ「武士は何の為に己の命を燃やすのか」を書きたかったのではないか?と思います。

誠一字の旗を背負って戦い、体中の血が無くなる程戦い抜いた吉村貫一郎。吉村貫一郎はいったい何の為にそれほどまでに戦い抜いたのか。

吉村貫一郎の短くも激しい一生、そしてその胸に深く秘めた「心」に号泣必至のこの作品、「平成の泣かせ屋」浅田次郎さん本領発揮の小説です。

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【おすすめ作家】浅田次郎さんの歴史・時代小説②:輪違屋糸里

輪違屋糸里 上 (文春文庫)

第二部に位置づけられるのは『輪違屋糸里』です。

第一部の『壬生義士伝』が「男の典型」であるならば、この『輪違屋糸里』は「女の典型」と言ってもいいでしょう。

幕末動乱で激しく命を燃やしたのは何も男だけではありません。男の側で気高き女達もそれぞれの舞台で必死に命を燃やしていたのです。

余談ですが、この小説の重要な場面の一つである芹沢鴨暗殺の舞台は今も当時のままで残されています。京都の旧八木邸がその場所であり、鴨居には芹沢鴨暗殺の際につけられたとされる刀傷が残ります。私も実際にこの目で見ましたが、見た瞬間に「本当にこの場で殺されたのか」と、それまで映画やドラマの中の出来事のようだったものが一気にリアルになったように感じ、身震いしたのを覚えています。

気高き女達の儚くも美しい戦い。男は一生女には絶対に勝てないと改めて思います。

【おすすめ作家】浅田次郎さんの歴史・時代小説③:一刀斎夢録

一刀斎夢録 上 (文春文庫)

トリを飾る第三部は「一刀斎夢録」です。剣客揃いの新撰組の中でも最強の一人と謡われ、二番組隊長永倉新八をして「無敵の剣」と評さしめた三番組隊長・斉藤一。動乱の中で一人また一人と仲間が倒れていくなか、斉藤一は数々の修羅場をくぐり抜け、生き延びます。

その斉藤一が後輩に当たる警視庁の若い剣客に昔語りをするという体で話しは進んでいきます。

実は、この『一刀斎夢録』が一番主題を見つけにくい作品でした。『壬生義士伝』で男の典型、『輪違屋糸里』で女の典型を書いた浅田次郎さんが『一刀斎夢録』で言いたかったことは何なのか。恐らくですが、浅田次郎さんはこの『一刀斎夢録』を新撰組三部作の最後と決め、言いたいこと書きたかったことを全て詰め込んだのでは無いかと思います。それほど、この斉藤一の昔語りは内容が濃いのです。

斉藤一が生き抜いてきた時代とは何だったのか。斉藤や新撰組の仲間達が追い求めた「剣」とは何だったのか。そして、時代に取り残された孤児となった新撰組が最後に辿り着いた境地とは。そして、斉藤が最後に語る驚天動地の事実。

「無敵の剣」を誇る正真正銘の人斬り、斉藤一の独白に存分に唸って下さい。

戦国時代の歴史・時代小説おすすめ

歴史・時代小説の華と言えば、やはり戦国時代。どうしてもこの時代は外せません。

戦国時代とは、どこを始まりとしてどこを終わりにするのかというのは諸説入り乱れており、なかなか決めづらいのですが一般的な説に従って応仁の乱から大阪夏の陣までとしましょう。

人の欲望が剥き出しとなり、権謀術数の限りを尽くした戦国時代。面白くないはずがありません。三英傑と呼ばれた織田信長、豊臣秀吉、徳川家康を筆頭に、魅力的なキャラクターが綺羅星の如く現れた日本屈指の激動の時代。

その戦国時代を色濃く描いた作品を三つ、ご紹介致します。

戦国時代の歴史・時代小説おすすめ①:蒼き信長(安部龍太郎)

蒼き信長〈上〉 (新潮文庫)

戦国の覇王にして日本最高の革命児・織田信長。桶狭間以降、岐阜を制圧し一気に天下人への道を駆け上がる信長を描いた作品は数多いですが、その前半生を詳しく描いた作品はあまり多くありません。『蒼き信長』はその題名からも判るとおり、桶狭間以前の信長の前半生を中心に描いています。

桶狭間の戦いで勝利して一気に天下人への道を切り開いたかのように思われる信長ですが、実はその前、父の代からの血の滲むような努力がその礎となっている事はあまり知られていません。信長の家は尾張守護の下の守護代のそのまた下の家老の家柄でした。そこから如何にして尾張一国を治めるようになるのか。

戦国を代表する武将と言ってもいい信長の知られざる前半生の物語、「なるほど」と思われる事柄が沢山詰まっています。

戦国時代の歴史・時代小説おすすめ②:国盗り物語(司馬遼太郎)

国盗り物語(一)(新潮文庫)

戦国と言えば「下克上」の世界。下克上とは下の身分の者が上の身分の者を打ち倒す事を言います。「下が上に克つ(勝つ)」という事ですね。この言葉が歴史に残るほど、実は中世日本は身分制度に厳しく、人が生まれた身分から抜け出す事は容易では無かったと伺えます。

この「下克上」を体現したとされる有名な武将が二人居ます。東の北条早雲と西の斉藤道三であり、本作『国盗り物語』は斉藤道三を主人公として描かれます。

物語は道三を主人公とした前半と、道三の愛弟子とも言える二人の武将、織田信長と明智光秀の数奇な人生を辿り、最後は本能寺で二人の弟子の人生が閃光のように交わるという、ドラマティックな後半部分に分かれています。

「下克上」を体現した道三から、「本能寺の変」という戦国時代どころか日本史上最大のミステリーへと続く『国盗り物語』、必見です。

戦国時代の歴史・時代小説おすすめ③:戦雲の夢(司馬遼太郎)

新装版 戦雲の夢 (講談社文庫)

戦国最後の大いくさ、大阪夏の陣。太閤秀吉が築いた大阪城に「美しい最後」を賭けて集まった男達が居ます。

その中の一人、長曽我部盛親。父は土佐の片田舎から一時は四国全土を席巻した英雄・元親です。ちなみに父・元親の一生は『夏草の賦』という同じく司馬遼太郎さんの小説になっています。

元親から土佐二十四万石という大領を引き継いだ盛親ですが、大器を持ちながら世間知らずな面も有り、時勢も味方せず、所領の全てを失ってしまいます。

長い隠遁生活の末に最後に巡って来たチャンス、大阪の陣。盛親は悔いの多かった己の人生の全てを賭けます。

戦国最後を彩る戦いに咲いた盛親という「栄光無き天才」の物語。桜の散り際を愛でる事が出来る日本人であればこそ、感動出来る小説です。

おわりに:『歴史・時代小説おすすめ』を12作品お届けしました

歴史・時代小説のなかからおすすめを12作品選んで見ましたが、如何でしたでしょうか。

歴史・時代小説は決して「とっつきにくい」物ばかりでは有りません。ライトに読める物も多数存在します。

この「おすすめ」が読者の皆さんにとってのきっかけとなり、遥かな歴史の舞台への旅へと誘う一助になれば幸甚です。

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