小説『天地明察』のあらすじ&感想【幾度の挫折があろうとも…】

今回は小説『天地明察』のご紹介です。

ほんと、このタイトル格好いいですよねー。
これでもかってくらいストーリーに適しているタイトルなので、その意味するところにも注目いただきたいです。

ジャンルは「時代小説」。
江戸時代の碁打ちが、生涯を賭して「改暦」を目指します。

史実を基にしてはいますが、物語として楽しめるように脚色もきっちりされています。

何度も挫折を味わいながら、それでも立ち上がる主人公。
そんな主人公だからこそ集まってくる素敵な人々からも目が離せません!

小説『天地明察』のあらすじと魅力

天地明察(上) (角川文庫)

小説『天地明察』はこんな物語です!

星に魅せられた碁打ちの青年が、
度重なる難問と挫折を乗り越えながら、
生涯を賭して改暦の儀に”挑む”物語。
時は江戸時代。
主人公は二代目安井やすい算哲さんてつという碁打ち衆の一人。
またの名を渋川しぶかわ春海はるみと言いました。
彼の勤めは、将軍の前で碁を打つこと。
当時、将軍の前に出る機会を持つということは大変に名誉あることです。
しかし春海は碁打ち衆の仕事に全霊をかたむけることができないでいました。
碁が嫌いなわけではありません。
才にも恵まれています。
でも、何かが違う。
そういう漠然としたモヤモヤを抱えていました。
そんな春海が碁以外に好んだのが算術(現代で言う”数学”)や天文学です。
その情熱は並々ならぬもので、ときには碁以上に熱中してしまうほど。
碁打ち衆のライバルの中には、碁だけに集中しない春海の性分に腹を煮やす者もいました。
しかし、算術や天文学にうつつを抜かす春海の人生はやがて思わぬ方に向かっていき…?

『天地明察』のあらすじと魅力①:突如下された「北極出地」のめい

碁打ち衆である春海の仕事はあくまで碁を打つことです。

しかしある日、春海にある命令が下されます。
「北極出地」。北極星の位置を、日本全国を回って観測してこいというのです。

北極出地の任にあたれば江戸を離れることになり、その間は碁打ちの仕事ができなくなります。

なぜ一介の碁打ちである自分が、と思いつつも任務にあたる春海。

日本中を回る北極出地の任には隊が組まれていて、ここで春海は人生を左右する人々と出会い、さらには貴重な経験をしていくことになります。

旅の模様は細かに書かれていて、算術や観測に関する専門知識も多数登場して読みごたえがあります。
当時の時代性や、学問発達の程も体感しながら読み進めてみて下さい!

ハル
全国を回って星を観測するのか……。
知識や技術だけでなく、根気や情熱も大切になりそうだ。

『天地明察』のあらすじと魅力②:勝ち気な女性”えん”の存在

『天地明察』には魅力的な人物が多数登場しますが、中でも”えん”という女性を外すことはできません。

春海とえん・・の出会いは物語序盤。
春海が「算額絵馬」を見るために訪れた神社でのことでした。

算額絵馬とは、絵馬に算術の問題を書き記して奉納したものです。

↑写真は算額絵馬ではありませんが、春海とえん・・が出会ったのはこんなふうに絵馬が悠然と並んでいる神社でした。
算術が大好きな春海にとっては夢のような場所です。

すっかり算額絵馬に夢中になってしまった春海は記された問題を解こうとするあまり、地べたに座り込んで計算を始めてしまいます。
早朝ということもあり他に人の姿はありませんでしたが、神社の境内で座り込んでしまうなど迷惑な話です。

そんな春海を窘めたのが、この神社へ奉公に来ていたえん・・でした。

見ず知らずの怪しい男性に、それでも物怖じせず言いたいことを口にするえん・・
春海は春海で穏やかで天然な性格なので、えん・・の厳しい物言いを馬鹿正直に受け止めます。

この出会いをきっかけに、春海とえん・・の縁はずっと続いていくことになります。
まさに運命の出会いというべきものでした。

性格こそ真反対の二人ですが、春海はえん・・の存在に何度も救われることになりますし、えん・・もちょっと頼りない春海を放っておけず気にかけています。

この二人の関係がどのように変化していくのかも「天地明察」を楽しむ要素の一つと言えます。

ラウ
初対面の男性を叱責するなんて、なかなかやるわね。
すごく好感が持てるわ。
ハル
強気なとことか、何だかんだ言って面倒見の良いとことか。
えんさん、ちょっとラウさんに似てますよね。
ラウ
ありがとう、ハル。
褒め言葉として受け取っておくわ。

『天地明察』のあらすじと魅力③:「改暦」という大役

春海はやがて大きな任を与えられます。

それが「改暦かいれき」でした。

こよみ”は簡単に言うとカレンダーのようなもので、年月日を定めます。
さらには月の満ち欠けや、日の入りや日の出の時間などもこれに含まれます。

事の発端は当時採用されていた暦にズレが生じてきたことでした。
月の満ち欠けを外したり、予想される日の入りや日の出の時間もズレてきます。
これを放っておけばいずれは日にちすらズレていってしまう…。

必要なのは、より正確な”新たな暦”を日本にもたらすこと。
すなわち「改暦」でした。

改暦を成すためには様々な学問の素養が必須です。
加えて前代未聞の一大事業に挑み続ける情熱が何より重要になります。

算術や天文学に絶え間ない情熱を注ぎ込んでいた春海は、その才能と性分を見初められ、改暦の”総大将”に抜擢されることになりました。

碁打ちの自分にくすぶっていた春海は、改暦という生涯をかけて挑むべきものと出会い、邁進していきます…。

ラウ
人生を懸けられるほどの何かに出会えたら幸せよね。
改暦……。一筋縄ではいかなそうだけど、成し遂げられるといいわね。

『天地明察』のあらすじと魅力④:挫折に次ぐ挫折。しかし度重なる”縁”に背中を押されて……!

改暦を成し遂げるまでには、想像だにしない苦難がいくつも待ち構えています。

いくら春海が星好きだからといって、苦心した末の失敗となれば心が折れることだってあります。

しかしそんなときに支えとなってくれるのが、様々な縁が結んでくれた人々との繋がりでした。

春海の周りにはえん・・を始め、様々な人たちが集まってきます。
それは春海の人柄や情熱のおかげでもあり、同時に運命ともいえるものでした。

同じ時代を強く生きる人々。
彼らの助けを得て、時には彼らの情熱に感化されて春海は何度挫けても立ち上がります。

読者はきっと、そんな春海を応援せずにはいられないはずです。

ハル
挫折を知らない人より、挫折した後で立ち上がれる人の方が強いし格好いいよな。

おわりに:小説『天地明察』の感想

僕が『天地明察』を手に取ったのは作者の冲方丁先生の大ファンだったからです。
いわゆる作者買いというやつですね。

今でこそ何冊もの時代小説を世に送り出してる冲方先生ですが、実はこの『天地明察』が初の時代小説でした。

それまで僕が読んできた冲方先生の作品がSFやファンタジーだった上に、当時は時代小説を読んだことがほとんどなかったので、正直なところ期待半分不安半分といった心境だったのを覚えています。

しかし読み始めてみると一気に夢中になってしまいました。

春海をはじめ、どのキャラもいきいき・・・・としていて、何よりそれぞれの人生に重みを感じられました。

算術や天文学の専門知識も多数登場して、読んでいるだけで知識欲を駆り立てられます。
ストーリーにもハラハラさせられ、何より春海たちの熱い想いに感動しきりでした。

春海の人生を懸けた大勝負を臨場感たっぷりに追体験できる『天地明察』。

この小説を読めば、自分も強く生きたくなるはずです。

時代小説好きの人も、読まずに敬遠してしまっている人にも自信を持っておすすめしたい一冊です!

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