小説『精霊の守り人』のあらすじ&感想《傑作ファンタジーです》

凄腕の女用心棒・バルサと、幼き皇子・チャグムの物語です。
(女用心棒というワードにすごく惹かれませんか…?)

どんな困難にも勇猛に挑む経験豊富なバルサ。
いきなり外界へ放り出された皇宮育ちのチャグム。

二人の出会いは、国を揺るがす大きな渦となっていきます。

引き込まれるストーリーもさることながら、作り込まれたファンタジーの世界観も魅力の一つ。

ぜひこの美しい世界に浸りながら、ドキドキの物語をお楽しみください!

小説『精霊の守り人』のあらすじ

精霊の守り人 (新潮文庫)

小説『精霊の守り人』はこんな物語!

精霊に取り憑かれた幼き皇子を、歴戦の女用心棒が守り導く物語
新ヨゴ王国の第二皇子として育ったチャグムはある日、その身に精霊の卵を宿されてしまいます。
神聖な存在である皇族が、魔性の類いに取り憑かれたとあっては民衆の信仰が失われてしまう。
それを危惧したチャグムの父である帝は、実の息子の暗殺を命じました…。
一方、帝の決断を察したチャグムの母・二ノ妃はチャグムを救う手立てを模索します。
そんなときに出会ったのが女用心棒のバルサでした。
皇子・チャグムの一行が、荒れ狂う川に掛かる橋を渡る最中のことです。
なんとチャグムを乗せる牛車を引いていた牛が、突然暴れ出します。
牛車から投げ出されたチャグムは川へ真っ逆さま。
轟々とうなる川に踊らされる幼き命。
普通なら助かるべくもありません。
しかし幸運なことに、川下の別の橋でそれを見ていたのがバルサでした。
バルサは咄嗟の判断で縄を取り付けた短槍を岸に投擲し、それを命綱に迷うことなく濁流に身を投じます。
見事皇子を助け出したバルサは、二ノ妃に腕を見込まれて皇子の用心棒を依頼されますが……。
ラウ
皇族を救うためとはいえ、荒れた川に迷わず飛び込むのは凄いわね……
ハル
バルサって人は異邦人らしいですから、別に皇族への信仰心で飛び込んだわけじゃないみたいですよ。
何が彼女をそこまでさせるんでしょうか……?

小説『精霊の守り人』の主要登場人物(超主観)

【こんな大人に憧れる代表】バルサ

凄腕の女用心棒。通称「短槍使いのバルサ」。

トップクラスの武力を有する。
精霊やら呪術やらが存在する世界を短槍一本で生き抜く強い女人。

とある理由から「不殺の誓い」を立てており殺生はしない。
用心棒という立場ゆえ「殺さず、自身と護衛対象を守る」というえらくハードな状態に。
それでも立ちゆくくらい強い。

そして何が凄いって武力だけでなく知性や判断力もスバ抜けていること。
荒れ狂う川にだって迷わず飛び込むし、強者との戦闘中に「肉を切らせて骨を断つ」判断を瞬時にしてみせたりもする。

女用心棒。超強い。知性・判断力○。人格者。慕う人も多い。
あまりに完璧すぎるので弱点を探してみたりもしたが無駄だった。

しかし(というか案の定)過去に何かあったようで、それに縛られている様子も見受けられる。
チャグムとの出会いでバルサも学ぶのかもしれない。

とにかく格好いい大人。
こんな大人になりたかった。

ハル
どんなに強い人にでも弱い一面はあるもの。
それをおくびにも出さず超えていく姿が格好いいな。

【成長の予感しかしない】チャグム

幼い身ながら苦境に直面し、民草の生活圏へ放り込まれた皇族の男の子。
護り、導く役割を担ったのは凄腕かつ人格者の女用心棒。

設定からして成長の予感しかない。
出会ったばかりのバルサに「この子には気骨がある」と言わしめるのだから手に負えません。

当初こそ民草相手に皇族然とした振る舞いを見せるが、それでも誠実な人柄は隠し切れていない。
良い子なんです。

下々の生活に馴染んでいく様子。
取り憑いた精霊と向き合う恐怖と覚悟。
父である帝に命を狙われる現実。
バルサと過ごす事で得る学びと、バルサに与える影響。

本作の主人公はバルサだが、この子も間違いなく主人公の一人。
そう考えると『精霊の守り人』というタイトルは極めて秀逸に思われる。

ラウ
壮絶な状況ね……
それにしても、やっぱり王族って面倒。王である父親の決断をこの子はどう思っているのかしら?
この子にとってバルサが、ただの用心棒以上の存在になれたらいいわね。
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小説『精霊の守り人』のおすすめポイント

  • 美しいファンタジー世界。それを描く文体。
  • 魅力的なキャラクターたちの思惑や人間模様、そして成長。
  • 戦闘シーンの迫力と駆け引き。
  • 食事シーンにもぜひご注目下さい!

美しいファンタジー世界。それを描く文体。

『精霊の守り人』の世界には”サグ”と呼ばれる現実の世界と、”ナユグ”と呼ばれる精霊の世界があります。

二つの世界は重なり合うように存在していて、現実世界サグでは森の場所が精霊世界ナユグでは川になっているなんてことも。
精霊世界ナユグの川で異変があると(氾濫とかですね)、現実世界サグの森にも普通では有り得ない不思議な影響が出たりするわけです。

しかし精霊世界ナユグを視たり感じたりできる人は限られているようで、このことも物語に大きく関わってきます。

全体的にアジアチックなファンタジーの世界観なのですが、確かなオリジナリティも溢れていて引き込まれます。

そんな世界を描き切る文体も秀逸。ほんとうに美しい文章ですし、もとが児童文学なだけに読みやすさも折り紙付きです。

濃厚なファンタジー世界に入り浸ることができるのが『精霊の守り人』の醍醐味です!

ハル
俺もいろんな世界を知ってるけど「重なり合った世界」っていうのは想像しにくい。
あっちの世界を視られる人が限られている、っていうのも面白そうだ。

魅力的なキャラクターたちの思惑や人間模様、そして成長。

バルサやチャグム以外にも数多くのキャラクターが登場します。

バルサの幼馴染みや、高名な呪術師。敵サイドの刺客もしかり。

印象的なのは誰もが(敵サイド含めて)目的のために意志を持っていて、葛藤しながら行動して戦っていること。
彼らの思惑や願望が織りなす人間模様にも要注目です。

特にバルサとチャグムが紡いでいく絆には感動させられるはず。

ラウ
やっぱり誰かとの絆っていいわよね。
敵側にもちゃんと彼らなりの正義があるのも魅力かしら。
 

戦闘シーンの迫力と駆け引き。

とにかく戦闘シーンがスゴいんです!

文章でここまで表現できるかというスピード感。
そしてその中で展開される武人たちの駆け引きには目が離せません。

特に「チャグムを守る」を最優先するバルサの的確な判断力や、それを可能にする戦闘能力には感嘆させられるはず。

正直、『精霊の守り人』を読む以前は槍という武器にあまり魅力を感じていなかった僕ですが、今では「短槍かっこいいなぁ」と心底思うようになりました。(笑)
”短”槍ってとこがまた魅力で、得物を手足のように扱うバルサにご注目ください!

ハル
玄人の戦いは瞬間的な判断の連続。
素人では計り知れない、戦う人の思考を文章を通して知れるのは嬉しいな。

食事シーンにもぜひご注目下さい!

『精霊の守り人』の魅力にこれを挙げないわけにはいきません!

オリジナルの料理が多数登場します。
しかもその描写が異常に巧いので読んでいるだけでお腹が減ってきます。
バルサやチャグムたちが、これまた美味そうに食べるんですよね…。

別冊で料理本が出版されたと言えばその凄さが伝わるでしょうか?
(『精霊の守り人』はシリーズもので、こちらの本はシリーズを通した料理が載せられています)

ラウ
私は「ノギ屋のお弁当」が食べてみたいわ。
ファンの間でも食べてみたいという声が多かったそうよ。
※補足「ノギ屋の弁当」
チャグムがバルサに預けられてから最初に食べた弁当。
高級なものばかり食してきたであろうチャグムもその旨さに驚いた様子です。
トーヤたちが買ってきてくれたのは、鶏飯だった。ジャイという辛い実の粉とナライという果物の甘い果肉をまぶしてつけこんだ鶏肉を、こんがりと焼き、ぶつ切りにして飯にまぶしたもので、これもじつにおいしかった。
上橋菜穂子『精霊の守り人』(新潮文庫)より

おわりに:小説『精霊の守り人』の感想

『精霊の守り人』は僕の中で1、2を争う一冊です。

美しい世界の中でリアリティを伴って生きている人々が愛おしい。
みんなちゃんと生きているのだと思わされます。

守り人シリーズは短編や外伝を除くと7作あります。
(”守り人”はバルサ、”旅人”はチャグムが主人公)

  • 精霊の守り人
  • 闇の守り人
  • 夢の守り人
  • 虚空の旅人
  • 神の守り人
  • 蒼路の旅人
  • 天と地の守り人

これだけの長編を濃密に描けるのは、世界観やキャラクターが確立しているからに違いありません。

バルサやチャグムの目を通して、ぜひこの傑作をお楽しみいただければ嬉しいです!

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