小説『狼と香辛料』のあらすじ&感想【テーマが”経済”のラノベ…!?】

今回ご紹介するのは、電撃文庫より刊行、支倉凍砂「狼と香辛料」です!
小説の中でもライトノベル、いわゆる「ラノベ」というジャンルに区分されるこの作品。

ラノベというと、マンガのようにサクサク読める文体や会話文中心で簡潔な内容の小説というイメージを持たれるかもしれません。
ですがこの作品のメインテーマは「経済」です。逆になんだかお堅そうですね?

「誰でも触れることのできる読みやすさ」というライトノベルの長所を残したまま、経済の動きを絡めた商人同士の目に見えない駆け引きが味わえる、ある意味での異色作。

ここではそんな「狼と香辛料」のあらすじと感想をお届けしたいと思います!

ブログ運営者より:
この記事の本文は読書家ライター・Ima_Meguruさんに書いて頂きました!

ラノベ小説『狼と香辛料』のあらすじ

狼と香辛料 (電撃文庫)

『狼と香辛料』のあらすじ①:行商人と謎の密行者

主人公の「クラフト・ロレンス」は各地を旅しながら商売を行う「行商人」。

ある日、商取引のために馴染みのパスロエ村へ立ち寄ると、ちょうど麦の豊作を司る狼の化身「ホロ」を祀る収穫祭の真っ最中。
商談のタイミングではないと判断したロレンスは一度村を後にします。

その夜、祭りを楽しむ村の人々の様子を思いだして旅行く独り身の寂しさを感じたロレンスは、早々に荷台で休むことにしました。
そして荷台の覆いを剥がしてロレンスは驚愕。

そこには、見知らぬ一人の娘がいたのです。

『狼と香辛料』のあらすじ②:行商人と狼の化身

ロレンスが荷台の娘を問いただすべく、声を掛けて起こそうとすると、娘は身を起こし月を見上げます。
そして、その口から放たれたのは、まぎれもない本物の「遠吠え」でした。

見ると、美しいその娘の頭には獣の耳、口には鋭い二本の牙、そして綺麗な毛並みの尻尾がついており、自らを「ホロ」と名乗ります。
悪魔憑きの娘ではないかと疑うロレンスに、身体の一部を狼の姿に変化させることで、自分こそが豊作を司る狼の化身であると証明するホロ。

そしてホロは、自分も旅に連れていってほしいとロレンスに告げます。
行く当てはあるのかと尋ねるロレンスに、ホロは一言。

「北に、帰りたい」

ホロが告げた場所は、北にあるという「ヨイツの森」。

彼女の生まれ故郷だというその場所は、行商人のロレンスも聞いたことも無いような場所でした。
故郷を離れ数えきれないほど長い時間が経ったというホロの言葉どおり、その場所はもはや存在しているかどうかも分かりません。

それでも、誰かと旅をするということに密かに憧れがあったロレンスは、新たに「ホロ」という旅連れを加え、彼女の生まれ故郷を目指しながらの行商の旅をスタートさせます。

ドルフ
行商人と狼の化身……奇っ怪なコンビだな。
上手く立ちゆくものかどうか……?
ルナ
わたし達が言えた義理じゃないと思うけど……。
まあ確かに気がかりではあるな。
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ラノベ小説『狼と香辛料』はココが面白い!

  1. 手に汗握る、商人同士の目に見えない駆け引き!
  2. ウィットに富んだ、ロレンスとホロの会話劇。

ポイント①:手に汗握る、商人同士の目に見えない駆け引き!

この作品は中世ヨーロッパに近い架空の世界が舞台になっています。

ともすれば、冒険でも始まりそうな世界観の中。
敢えて設定されたテーマが「経済」であるという部分がこの作品の最大のポイント!

なので、この物語の展開の中で起きる戦いは剣や弓ではなく、目に見えない商人同士の駆け引きこそが戦いなのです。

表面上は互いに気の良い会話を交わしながら、

「この笑顔にはきっとこういう理由があるのだろう。油断ならない」
「今回の儲け話は嘘のようだ。ならば、なぜその嘘の話を俺に持ちかけてきたのか?」

そんな推測と駆け引きを駆使して、ロレンスは厳しい行商人の世界で戦っています。

とはいえ、彼もまだまだ学ぶことの多い身。
十分に先を読んだつもりでも、思いがけない商売の落とし穴に嵌ってピンチに陥ることもあります。

読者としても「そんな盲点があったのか!」と唸ってしまうほどですが、この一見しただけでは分からない商取引の絡み合いこそが、作品の醍醐味と言えるでしょう!

当人のロレンスからしたら、たまったものではないのでしょうがね……。(笑)

ルナ
わたしは難しい交渉事とか駆け引きは苦手……。
そういうのが得意なヤツって憧れるよな。

ポイント②:ウィットに富んだ、ロレンスとホロの会話劇。

この作品のもう一つのウリは、ロレンスとホロの間で繰り広げられる、洗練された会話劇です!
とんちやダブルミーニングのような機転を織り交ぜ、互いに言葉を切り返す様子は、さながら「会話の追いかけっこ」。
読んでいて、小気味良く、非常に気持ちがいいものです。

その屋台骨を支えるのがヒロインである、ホロ。
思うに、彼女の役割は、ロレンスのキャラクター性を最大限に引き出す、いわば「最高の引き立て役」であると言えます。

数々の交渉事をくぐり抜け、人並み以上に頭のまわるロレンスに対し、それ以上の機転と発想で切り返すホロの言動は読んでいて舌を巻くばかり。
ですが今にして思えば、そこには作品上もっと深い意味があるようにも感じるのです。

通常なら「この主人公は頭の回転が早いな」で終わるセリフに対し、その鼻っ柱をホロが折ってくれる。
一本取られたとばかりに、悔しそうにするロレンスに「まだまだ商人として揉まれている最中なんだな」と、私たち読者は再確認し安心感に似た気持ちを覚える。

商人として一本立ちしてはいるものの、まだまだ未熟な部分もある「行商人の若者」というキャラクター性を引き出すうえで、ホロのポジションはまさに最適解でしょう。

「わっちは賢狼ホロじゃ。ぬしの何十倍生きとると思っとる」

支倉凍砂『狼と香辛料』(電撃文庫)より

読了後の身からすれば、作中でホロが発したそんなセリフは、ロレンスとともに舌を巻く読者に向けた言葉のようにも思われてなりません。

読み進めるにつれてロレンスと同じ気持ちになりつつも、次はどんな言葉が飛んでくるかと密かに楽しみになってくることでしょう。

ドルフ
ロレンスとやらの成長も楽しみ、というわけだな。
二人の関係が旅の途上でどう変化していくのかも見物みものだ。

おわりに:『狼と香辛料』の感想

『狼と香辛料』は様々な要素を兼ね備えた作品であると言えます。

中世を思わせるファンタジーのような舞台設定があり。
ロレンスとホロが繰り広げる会話劇は、洗練されつつもどこかコメディチック。
商取引や経済を巡る見えない戦いやそこに潜む陰謀には、ミステリーに近い要素もあります。

ところで推理小説には、作者がヒントを出し終えた後、読者へ挑戦するページがあったりしますが。
私のお気に入りシーンであり、作品を明快に示すシーンがあるので、最後に一つそこから問題を出題してみましょう。

好物であるリンゴを荷台いっぱいに買ってもらったホロ。
「自分の食いぶちは自分で稼げよ」と言うロレンスに「すぐに返せる」とホロは得意げです。
その後ホロは、ロレンスが荷台に積んでいたテンの毛皮を売るために交渉するところに割り込み、見事ロレンスが提示した以上の金額で取引を成立させます。

さて、ホロはどのように交渉して毛皮を高値で売りつけたのでしょうか?

もし、この機会に本を手に取ってみたならば、このシーンは「自分ならどうするか」考えながら読み進めてみてください。
ちなみに、ヒントはすでに上の文に示されてますよ。

ドルフ
二人のやり取りもさることながら、知性溢れる展開も楽しめる小説のようだ。
ルナ、おまえはこの問いの答えが分かるか?
ルナ
それをわたしに振るのか……。こういのうはドルフの分野だろうに。
んー、ホロは美人なんだろ? 色仕掛けでつり上げた……とか?
ドルフ
俺は娘の育て方を間違ったのだろうか……。
まあ、”銃で脅す”でなかっただけ良しとしておこう。

ちなみに、ヒントは「キーワード」「共通点」といったところだな。

ルナ
ドルフみたく頭使って読むヤツも、わたしみたく何も考えず驚きながら読むヤツも。
きっとみんなが楽しめる小説だ!
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