小説『燃えよ剣』のあらすじ&感想 【剣に生き、剣に死んだ男の物語!】

今回ご紹介する小説は『燃えよ剣』です。
あらすじと感想を交えつつ、その魅力をお伝えしていければと思います!

かつては栗塚旭さん、役所広司さん等の名優が演じ、今年(2020年10月6日現在公開日未定)は岡田准一さんが演じる幕末イチの伊達男。
武州多摩が生んだ無類の喧嘩師にして、新撰組「鬼の副長」こと土方歳三。

多摩から京、鳥羽・伏見、甲府、東北、そして蝦夷(北海道)と剣と喧嘩に己の命を燃やし尽くした一匹の「鬼」の生涯。

男たるもの、歳三のように命を燃やし尽くせる人生を送りたいと思わせてくれる事必須です。

剣に生き、剣に死んでいった土方歳三の生き様を巨匠・司馬遼太郎が独特の小気味良いタッチで描ききった『燃えよ剣』、貴方の心を躍らせる事間違いなしのこの一作、必見です!

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この記事の本文は読書家ライター・楽観さんに書いて頂きました!

小説『燃えよ剣』のあらすじ

燃えよ剣(上) (新潮文庫)

『燃えよ剣』のあらすじ①:「バラガキ」のトシ

武州多摩郡石田村で生まれた歳三。

故郷では歳三のことを「バラガキ(当時の言葉で不良少年の意味)のトシ」と呼んで忌み嫌っていました。
若い頃から喧嘩と女遊びに明け暮れ、目ばかりギョロギョロさせながら「鬼足」と言われた早足で我が物顔で里中を歩き回る、典型的な不良少年です。

しかし喧嘩と女遊びに明け暮れるただの不良少年と思いきや、そこは剽悍無類の坂東武者の末裔。
今はただの百姓だがいつかは「侍になりたい」という燃えるような志を胸に秘め、天然理心流近藤道場で剣の修業にも精を出すのでした。

武州一帯は天領の地(徳川幕府の直轄地)という事もあり、「尚武(武道・武勇を重んじる事)の気風」に満ち溢れている土地柄でした。

  • 歳三が門弟となっている天然理心流
  • 武州蕨を本拠地とする柳剛流
  • 武州秩父に端を発する甲源一刀流

これらの流派が入り乱れて門弟の数を競っているという、さながら博徒の縄張り争いそのままの様相です。
このような状況のなか、歳三はひょんなことから甲源一刀流の達人・六車宗伯を斬ってしまいます。

これに怒った甲源一刀流・八王子比留間道場の道場主・比留間半造と師範代・七里研之助。

スマートな江戸人であれば事を荒立てる事も無かったでしょうが、そこはお互い「尚武の気風」に溢れる武侠の土地・多摩の住人。
良く言えば骨っぽい、悪く言えば野暮ったい素性は変わりません。端的に言えば「双方バラガキの集まり」なのです。

武侠の土地・多摩の片隅でバラガキ共の血で血を洗う決闘が幕を開けます。

ルナ
生まれ持ったたちも。育った環境も。大器の男にはぴったりだったわけだ。
悪ガキ時代の話も見ごたえありそうだな。

『燃えよ剣』のあらすじ②:京へ

天然理心流・近藤道場試衛館には「いつかは立派な侍に」と願う食客達がゴロゴロと割拠していました。
食客と言えば聞こえはいいですが、平たく言えば食いつめた浪人達、何のことはないバラガキの集まりです。

バラガキ共とは言え、その腕は皆一流。

道場主にして天然理心流三代目宗家、歳三の無二の親友・近藤勇。
試衛館師範代にして後に幕末最強と謳われた天才剣士・沖田総司。
近藤勇や歳三の兄弟子にあたり、その実直な人柄を誰もが愛した井上源三郎。

これら天然理心流の「兄弟」達を中心に、永倉新八、原田左之助、斉藤一など後に京の街を震え上がらせる一騎当千の強者達が「いつかは世に出る」という野望を胸に、日々を送っています。

ある日、食客の一人・山南敬助が耳寄りな話を持ってきます。
近く上洛する将軍の警護として、幕府が腕に覚えのある浪士を募集、浪士組の結成を画策しているというのです。

ハル
こうして見ると人にも恵まれているようだ。
……持ってる人間ってのは、自然と他者を惹きつけるのかな?

『燃えよ剣』のあらすじ③:「武士になれる」

千載一遇の好機、近藤以下試衛館の面々は浪士組に参加、京に上ります。

京に着いて早々、浪士組の首魁・清川八郎の「江戸へ戻る。尊皇攘夷の魁となる」という言葉に近藤と歳三は猛反発、水戸出身の浪士・芹沢鴨とその一味と図って京に残留します。

京に残留した近藤・歳三は早速隊士の徴募を開始、同時に京都守護職会津藩主・松平容保の許しを得て「会津藩お預かり」となり、ここに「新撰組」を結成します。

ここで歳三は意外な才能を発揮します。
組織作りの才能です。

歳三は有名な「局中法度」を作成、その一条目にあげた「士道に背くまじき事」を縦に、次々と隊内の邪魔者・弱者・裏切り者を粛清し、新撰組を幕末最強の剣客集団に育て上げていきます。

知略を尽くして隊内の粛清を進め、同時に京の巷(ちまた)を朱に染めて勇名を馳せる。
バラガキ歳三の本領発揮ともいうべきこのあたりの描写は、いやもう読んでて胸がワクワクします。

ルナ
一介の猛者だけでなくリーダーとしても活躍か。
どんな組織を作りあげていくんだろう……?

『燃えよ剣』のあらすじ④:落日

池田屋事件、ついて蛤御門の変と京を揺るがせた事変で勇名を馳せた新撰組。
幕臣にも取り立てられ、遂に念願の「武士になる」という夢を叶えた新撰組は絶頂の中にいました。

しかし、時勢は新撰組がこのまま絶頂のなかで生きていく事を許しませんでした。

徳川幕府第十五代将軍・徳川慶喜は政権を朝廷に返上する事を表明します。いわゆる大政奉還です。

慌てふためく近藤。
その傍らで歳三は喧嘩師らしく「戦さで事を決するんだよ」とあくまで闘志を失いません。

天下悉くが論客のようになっているなか、一人喧嘩師で有り続けようとするこの歳三の覚悟、見事としか言い様がありません。

どうしても幕府を潰したい薩長を中心とする新政府軍、新政府など片腹痛いあれはただのテロリストだと信じる旧幕府軍。
双方はお互いの信念を掛けて鳥羽・伏見で激突します。

一年半に渡る戊辰戦争の幕開けに際し、銃弾砲弾の飛び交うなかで歳三は逸る隊士を押し止め、「まあ門出の祝い酒を汲め」と酒樽の鏡を抜いたといいます。
小憎らしいほどのこの喧嘩師の余裕。読んでいるこっちまでゾクゾクしてきてしまいます。

鳥羽・伏見で一敗地にまみれ、江戸まで帰った新撰組。
圧倒的武力を誇る新政府軍を相手に、歳三が喧嘩師の執念を燃やし尽くした北征の日々が幕を開けます。

ハル
怒濤の時代に生きた人の物語ってわけか。
最後の最後まで見逃せないな。

『燃えよ剣』はココがおすすめ!

  • 夢と信念に燃やした人生!生き様が凄い!
  • バラガキ共の日常が鮮やかに!セリフのリアリティが凄い!
  • 喧嘩師の本領!死に様まで凄い!

夢と信念に燃やした人生!生き様が凄い!

主人公の喧嘩師・土方歳三。新撰組が結成されてからというもの、歳三の頭の中には「新撰組の強化」しかありません。
他人に嫌われる事を屁とも思わず、新撰組の敵になると感じたら例え試衛館以来の仲間であっても切り捨てる。

そして、その歳三を多摩から執拗に狙い続ける七里研之助。

天下国家の事など知らぬ、己の信念と剣のみが大事だと言わんばかりに命を燃やす二人のバラガキ。
その生き様にシビレます!

バラガキ共の日常が鮮やかに!セリフのリアリティが凄い!

バラガキ共の生き様を更に彩るのがそのセリフの数々です。
身分と格式のある武士の出身ではない、元をただせばただの百姓の出身。

「馬糞(まぐそ)臭え」「ちげえねえ」「何を云やがる」「近頃料簡がおかしかねえか」

尻のあがった多摩弁でまくし立てるように話しているのであろうその様、ともすれば「下品」と取られてしまいがちではありますが、「本当にこうだったんだろうな」とリアルに思え、頭にそのときの情景がありありと浮かんできます。

かくいう私も実は多摩の出身。
このともすれば下品と取られてしまいがちな言葉は私に取って懐かしさもあると同時に、リアリティの塊のようにも思えるのです。

喧嘩師の本領!死に様まで凄い!

夢を追い、信念を貫いて遥か蝦夷地(北海道)まで戦い抜いた歳三。先に逝った盟友・近藤の分まで、とばかりに蝦夷地でも暴れまくります。

歳三は二股口という天険の守備を任され、迫る新政府軍を蹴散らします。旧幕軍でただ一人の常勝将軍となり、「軍神」の域まで達する歳三。

「軍神」となった歳三が最後の決戦の最中に発した言葉。必見です!

おわりに:小説『燃えよ剣』の感想

司馬遼太郎氏は『燃えよ剣』のあとがきのなかで「男の典型を書いてゆきたい」とおっしゃってます。

喧嘩師・土方歳三の生涯はまさにこの「男の典型」を書く上でこの上ない題材です。と同時に、我々多摩の出身者にとってはかけがえのない郷土の英雄でもあります。

「男とは何か」「男の生き様とは何なのか」

誰の心の中にでもあるこの永遠のテーマに対して、「これこそが男の典型である」と言い切れる生き様、それが土方歳三の生涯であり、そしてその生涯を絶妙のタッチで描ききった作品、それがこの『燃えよ剣』なのです。

動乱の幕末を生き切った土方歳三という「男の典型」の物語、貴方も是非その生き様に震えて下さい!

ハル
自分の生き様を貫いた男の生涯……。
熱くさせられるなぁ。
ルナ
……あんたがそんなこと言うなんて珍しいね。
ま、気持ちはわかるけどさ。
ハル
信念に則った熱い想いを目の当たりにすれば誰だって心動かされるものだよ、ルナ。
一人の男の生き様をぜひ多くの人に体感して欲しいところだ。
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