小説『八朔の雪 みをつくし料理帖』のあらすじ&感想【料理・人情・あたたかな涙】

涙で潤んだまま本を閉じ、あたたかな余韻に浸ってしまう。

そんな読後感でした。
涙で文字が滲んでしまうことが何度もありました。

主人公をとりまく人々の優しさに心がじんと温かくなり、一緒に主人公を見守り一緒に涙してしまうのが小説『八朔の月 みをつくし料理帖』です。

作者は高田郁さんで、2009年5月に第1作『八朔の雪 みをつくし料理帖』が刊行されて、2014年8月に第10作目『天の梯 みをつくし料理帖」で完結しました。
ドラマ化、そして2020年には初めて映画化もされています。

今回は多くの読者に愛されベストセラーとなったシリーズの第1作目『八朔の雪 みをつくし料理帖』のあらすじ&感想を紹介いたします。

小説『八朔の雪 みをつくし料理帖』の世界、人情、料理を思う存分堪能してください。

ブログ運営者より:
この記事の本文は読書家ライター・大森羽菜さんに書いて頂きました!

小説『八朔の雪 みをつくし料理帖』のあらすじ

八朔の雪―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-1 時代小説文庫)

小説『八朔の雪 みをつくし料理帖』のあらすじ①:江戸の味、大阪の味

「せっかくの深川牡蠣を」という男の言葉から物語は幕を開けます。

男がいるのは昼は蕎麦、夜は酒と料理を楽しめる蕎麦屋『つる屋』

料理を作った主人公澪は生まれも育ちも大阪。つる屋の店主、種市から澪の料理をと言われ作りましたが、澪の作る料理は江戸の人々の口には合わないものばかりでした。

店主が懇意にしている浪人風の常連、小松原にも「面白い味」と言われ澪はチャームポイントの下がり眉を益々下げてしまうほど落ち込んでしまいます。

料理を食べてもらえず料理が残り食材が余ってしまうにも関わらず、店主は澪に料理を作ることをやめさせようとはしません。

何とかつる屋のお客の口に合う料理を作りたいと試行錯誤をする澪でしたが、なかなか思うような料理を作ることが出来ない日々が続きます。

何が駄目なのか、どうして受け入れてもらえないのか悩む澪の目を覚まさせたのは、偶然出会った医者の源斎の言葉でした。

澪が作った料理を食べた源斎の言葉で、澪はなぜ自分の料理がつる屋の客に受け入れられないのか気づきます。

気づき、力を得た澪は次の日から、自分が作りたい料理の完成を目指し試行錯誤を始めるのでした。

小説『八朔の雪 みをつくし料理帖』のあらすじ②:江戸の心太と大阪の心太

澪は店主の種市と医者の源斎とともに吉原を訪れます。種市が澪をねぎらうためにと吉原で行われる「俄」を見物に来ていました。

「俄」を楽しみ、いざ帰宅しようとしましたが澪の失敗でトラブルが起きてしまいます。

源斎の機転で事なきを得てほっとしながら帰宅していると、澪と一緒にトラブルに巻き込まれた人からのお礼で澪たちは心太(ところてん)を食べることになます。

江戸で食べる初めての心太に澪は驚くばかり。

食べながら話題は心太の材料のことや吉原の伝説の花魁「あさひ太夫」のこと、澪が住んでいた大阪の廓へと進みます。

澪はふたりに自分がなぜ大阪での奉公先だった女将のお芳と一緒に長屋にいるのか、大阪から江戸に来ることになったこれまでのことを話します。

澪が語る辛い記憶。
その中で唯一心が温かくなる澪と幼馴染の野江との思い出。野江は今どうしているか心配していることなども澪は種市と源斎に話したのでした。

暑い日が続くある日、澪は少しだけ余っていた天草で種市と自分の賄い用に心太を作ります。

あまりの美味しさに驚く種市と澪は、江戸っ子の気性を逆手に取ったある条件をつけて心太をつる屋で出すことに決めるのでした。

小説『八朔の雪 みをつくし料理帖』のあらすじ③:料理人としての基本

店主の種市は腰を痛めてしまいます。店を閉めて様子を見ていましたが医者の源斎に蕎麦を打つことはもう無理だと告げられてしまいます。

そのことを聞いて戸惑い不安に思う澪に、種市は雇われ店主を打診します。

一緒に住む、元は大阪でも名だたる料理店の女将を務めたお芳に相談し、一晩悩んだ末に受けることにします。

蕎麦屋からどのような店にするか澪は考えます。考えに考えて店を開けますがつる屋を訪れる客は少なく澪は落ち込みます。

落ち込み、悩み、焦った澪でしたが知恵を絞って新たな料理を生み出します。その料理は真似をする店が出るほどの人気料理となりました。

しかし人気料理を食べた常連の小松原の言葉に澪はどん底に落とされてしまいます。

落ち込み、悩み、焦る澪。しかし自信を無くした澪にお芳の言葉、源斎の言葉、種市の大きな心が澪を励まします。

周囲の人々の思いを胸に澪は再び料理に向かう合うのでした。

小説『八朔の雪 みをつくし料理帖』のあらすじ④:身も心もあたためる料理を

澪は順調で穏やかな日々を過ごしていました。

しかしその日々は長く続かず、このまま日々がと願う澪の心に反して不幸が次々と訪れます。災難に襲われるつる屋と澪とその周囲の人々。

相次ぐ災難に澪や種市は立ち直れない日々を送っていました。特に種市が受けた傷は澪の心をひどく痛ませるものでした。

種市の受けた傷、澪の料理人としての心を打ち砕いてしまうような災難に、澪は料理人を辞めようと心に決めます。

失意の中に沈む澪。ある日の夜、澪をもう一度困難に立ち向かわせる存在が現れました。驚き感謝の気持ちでいっぱいになる澪。その存在に力を得て澪は再び動き出します。

澪は知恵をしぼり、頭を下げ、まだ痛くなる心を抱えながらも今まで大切にしていきた人々の縁に感謝しながら出来る限りのことをします。

そして寒空の中で提供した料理は食す人々も澪の周りも元気づけるものでした。

ほっとしたのもつかの間、澪たちにまた変化が訪れたのです…。

小説『八朔の雪 みをつくし料理帖』はここが面白い!

小説『八朔の雪 みをつくし料理帖』はここが面白い①:人情あふれた魅力的な登場人物

なんといっても登場人物が魅力的です。

主人公・澪:
困難に何度も立ち向かう少女です。しかしその少女は迷い、泣き等身大の少女なのです。

つる屋の店主・種市:
懐の深い老人です。澪を温かく見守るお茶目で涙もろい種市が存在するだけでほっとします。

お芳:
さすが大阪の名だたる料理店の女将です。安心感があります。

医師源斎:
穏やかで物静で真っすぐ真面目な青年医師です。源斎の言葉が何度も澪に気づきを与えてくれています。

小松原:
澪にとって気になる人のようです。粋な浪人風情ですが本当はとてつもなく凄い人かもしれないとい思いを読者に印象付けます。

他にも澪が住む長屋の人々、つる屋を訪れる客たち、料理の材料を卸してくれる問屋や農家やぼてふりなど人情に厚い江戸を生きる人々が描かれています。

小説『八朔の雪 みをつくし料理帖』はここが面白い②:出てくる料理が美味しそう

料理帖とタイトルにつけられているように、物語中ではとてもおいしそうな料理が登場します。

巻末には登場したレシピが載っています。どれも作者が実際に作ったそうなので美味しさは折り紙つきです。

物語では料理のひとつひとつが丁寧に書かれています。

おいしそうなのはもちろんのこと、イマイチなものからまずぞうなものまで
登場人物とともに料理を味わえる本です。

おわりに:小説『八朔の雪 みをつくし料理帖』の感想 

なぜ『八朔の雪 みをつくし料理帖』とタイトルなのかとふと考えました。
澪が人々に身をつくしていく。澪標(みおつくし)という目印がある。というふたつのことに気づきました。そして澪を取り巻く人たちの暖かで時には厳しい人情。

澪は自分の思いを定めて、周りの人々に助けられながら成長するのです。
八月朔日。通称八朔とは吉原の遊女が白無垢で客を迎える紋日です。

澪が料理人として真っ白な状態で道を歩んで行く。なんとぴったりなタイトルだと思いました。
ひとりの女料理人の成長、江戸人情、数々の料理を堪能したい方はぜひ小説『八朔の雪 みをつくし料理帖』をお手に取ることをお勧めします。

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