「吾輩は猫である。名前はまだ無い」
そう語った猫がいた。
そしてその猫を語る、もう一匹の猫がいた。
『旅猫リポート』はそんな感じで始まる、猫が語り部を務めるロードノベルです。
猫が語り部なんて面白そうですよね、しかもなかなかにませてるんですよこの猫。
ですが油断してはいけません。
泣きます、すぐ泣きます。笑
この作品は何度も泣かせにきます。
僕も油断していた口で、読み終えるまでに3回は泣きましたね、しかも出先で。
一つの命の生きた風景が美しく描かれる本作は、悲しくて切なくて、それでいて優しく暖かに物語が紡がれていきます。
この「旅猫リポート」は図書館戦争などで、知られる有川浩さんの作品の一つです。この記事では『旅猫リポート』のあらすじと感想をネタバレなしで書いていますので、気になった方はぜひ読んでみて下さい!
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この記事の本文は読書家ライター・タイタンさんに書いて頂きました!
『旅猫リポート』のあらすじ
『旅猫リポート』のあらすじ①:青年との起点
野良猫として生きてきたナナは、ある夜に車に敷かれ怪我を負ってしまいます。
骨が飛び出すほどの大怪我を負ったナナ、そんなとき思い出したのは、いつも餌をくれていた青年でした。
アイツならなんとかしてくれるかも、、、
声の限りに鳴きながら、ナナは青年の住むマンションに向かいます。
マンションの近くまできたとき、ナナの声に目を覚ました青年が、血相を変え走り寄ってきました。
遅いよと文句をたれながら、ナナは青年に連れられ動物病院へ行き、なんとか事なきを得ました。
『旅猫リポート』のあらすじ②:野良猫から飼い猫に
ナナは怪我が治るまでの間、青年の部屋に身を寄せることになります。
そこで、その青年の名前がミヤワキサトルであることを知りました。
サトルとの生活が始まり2ヶ月が経ち、すっかり怪我が治ったナナは部屋を出て行こうとします。
その後ろでとても寂しそうにしていたサトル、うちの猫になってほしいという気持ちを吐露します。
「怪我が治れば出ていかなくてはならない」
そう思っていたナナは、「居ていいならいいって早く言えよ」と出ていくことを辞め、サトルの猫になることを決めました。
『旅猫リポート』あらすじ③:そして旅猫に
飼い猫になったナナは、尻尾の形が数字の7になっているからという理由で、ナナという名前を提案されました。
女の子っぽい名前に雄猫であったナナは反発しますが、サトルに気に入ったと勘違いされ、そのまま命名されてしまいます。
そこから5年が経ちました。
「ごめんな」なぜか謝りながらナナを撫でるサトルは、ナナを手放さなければならないと語ります。
ナナも仕方ない、と納得した様子でケージの中に入って行きます。
そしてケージに入ったナナをワゴンに乗せ、ナナを引き取ってくれる人を探す旅に出ました。
『旅猫リポート』あらすじ④:コースケと小学生のサトル
サトルの小学生時代の親友コースケは、「猫を貰ってほしい」そうサトルから連絡を受けていました。
サトルを家に招き入れたコースケは、小学生時代の話に花を咲かせました。
そこでナナは、サトルのある悲しく残酷な過去を知りました。
これ以上はネタバレになってしまうので控えておきますが、ナナの旅はまだまだ続きます。
色んな景色に出会いながら歩んでいくサトルとナナの旅を、ぜひ本を手に取って確かめて下さい。
『旅猫リポート』のススメ!!
- ナナのユーモア溢れる語り
- 苦しいほどに愛おしい物語
『旅猫リポート』のススメ①:ナナのユーモア溢れる語り
本作の魅力として外せないのは、やはりナナの語りです
旅猫リポートというタイトル通り、本作では猫のナナが語り部を務めます。
吾輩は猫である。名前はまだ無い。__と仰ったえらい猫がこの国にはいるそうだ。
その猫がどれほどえらかったのかは知らないが、僕は名前があるという一点においてのみ、そのえらい猫に勝っている。有川浩『旅猫リポート』(講談社)より
この本の冒頭のっけから誰もが知るあの猫と張り合いだすナナは、なかなかにプライドが高い性格です。
自分のことを類まれなる聡明な猫とか言ったりもするんですよ、こいつ。
そんなナナの猫ならではの視点で語られる風景は、いつもと少し違って見えます。
この地鳴りのような音は何?何か聞いたことのない種類の音がするよ?何なのこの圧倒的な重い物音は?
目の前に海が開けた。圧倒的な量の水が絶えずうねり来る。
「ほーらナナ、海だよ~。波が面白いね~」
面白い!?面白いって何!?この圧倒的なエネルギーを伴った大量の水の永久運動が面白いって、人間ってどんだけ能天気なの!?有川浩『旅猫リポート』(講談社)より
ナナには波が“圧倒的なエネルギーを伴った大量の水の永久運動”に見えたようです。
このあとナナは波から逃げるために崖を駆け上がります。さすがのナナにも怖い物はあるみたいですね。
一般的に猫は水を嫌がりますが、ナナもやっぱりそうだったのでしょうか。
体を洗われる様子が個人的に気になるところ、、、
『旅猫リポート』のススメ②:苦しいほどに愛おしい物語
本作の1番の魅力は、やはりその物語性にあります。
有川浩作品は共感を誘れるものばかりで、本作にもその特徴が現れています。
サトルは、コースケ以外にも古い友人たちのもとを訪れることになります。
サトルと彼らとの物語は、どれもいとおしくも痛く、気づけばそこには“共感”が生まれてしまっています。
古い友人を巡る旅の道中で、サトルとナナは様々な景色に出会います。
美しい風景を堪能する一人と一匹の微笑ましい様子が描かれ、そこにもまた“共感”が生まれています。
この旅が終わりを迎えるとき、積み重なったその共感に思いを馳せると、涙が止めどなく溢れることでしょう。
おわりに:「旅猫リポート」の感想
僕は普段、電子書籍でばかり本を読んでいるのですが、これだけはと紙媒体で飾ってある本作。
この本をきっかけに有川浩さんの作品をほぼほぼ読破してしまったぐらいに大好きで、この記事を書いている最中も思い出し泣きをしてしまいました。
映画化もされているのですが、映画にはなかった数々の場面が描かれています。
ほんとに気持ちよく泣ける作品ですので、ぜひ読んでみてはいかがでしょうか。