安部公房『砂の女』のあらすじ&感想【世界で認められた名作】

『砂の女』は、砂丘へ昆虫採集に出かけた“男”が、砂穴の底に建つ一軒家に閉じ込められるというお話です。
その一軒家に住む“女”との生活を余儀なくされ、男は様々な手段で脱出を試みるが…。

読み進める毎に、独特な世界観に読者を引きずり込んでいく一冊です。

一見、どんな話か想像もつかないかもしれませんが、なんと20数カ国語に翻訳され、フランスでは最優秀外国文学賞を受賞した“世界的な名作”!

作者の安部公房先生は、芥川賞受賞歴もあります。

この記事ではそんな『砂の女』のあらすじと感想をネタバレなしで紹介します。

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この記事の本文は読書家ライター・オオサキさんに書いて頂きました!

安部公房『砂の女』のあらすじ

砂の女 (新潮文庫)

安部公房『砂の女』のあらすじ①:行方不明になる“男”

普段学校の先生をしている“男”が、8月のある日、行方不明に…。

男は、大きな木箱と水筒を肩にかけ、山登りをするような格好で、ある砂丘を目指します。
目的は砂地にすむ昆虫の採集で、新種の発見を試みていました。

砂丘で虫を探していたところ、部落の老人に話かけられ、村の民家に泊めてもらうことになるのです。
その民家は、縄梯子を使わないと下りていくことが出来ないほど高い砂の崖の下にありました。

安部公房『砂の女』のあらすじ②:民家での生活

縄梯子を使ってたどり着いた砂穴の底にある民家は、壁がはげ落ち、柱はゆがみ、畳はほぼ腐りかけのひどい有様ですが、面白い昆虫が住みつきそうな環境なので、男は苦言を呈しませんでした。

そして、住人である“女”は色白で愛嬌のある顔立ちをしていて、男を大歓迎してくれます。

家の中にも砂が入り、屋根や屋外にも砂が積もるため、毎晩やらなければならない砂掻きを男は手伝うことになります。
女は、昨年主人が他界したと言い、毎日1人で砂掻きをしていたのでした。

部落の存続のため、砂掻きを一生の務めとしている女を理解することができず腹立たしい気持ちを抱きながらも、男は一晩を民家で過ごします。

安部公房『砂の女』のあらすじ③:砂穴に閉じ込められた男

翌朝、目を覚ました男は、外に出た瞬間、言葉を失います。
信じがたいことに、昨夜あったはずのところから縄梯子が消えていたのです。

男はよじ登れそうな場所を必死に探して登って行こうとしますが、大量の砂に体力を奪われ、筋肉はひきつって、動けなくなってしまいます。
現実を受け入れることが出来ず、叫びだしそうになるのをこらえながらも、男は家に戻って、女を問いただします。

それでも女は、首を左右に振り続けるだけで、何も答えませんでした…。
そこから、男は逃亡の計画を立てつつも、女との生活を続けることになります。

男の砂穴からの逃亡を邪魔する部落の人々。男を引きとめようとする女。

砂丘の部落の目的とその正体とは何なのか。そして男の衝撃の結末とは!

安部公房『砂の女』はここが面白い!

安部公房『砂の女』はここが面白い①:本当の自由とは

砂穴に閉じ込められる前の自由だった頃、男は仕事に煩わしさを感じていたりと、あまり明るい記憶がありません。
昆虫採集だけが、男の灰色の日常を支える楽しみです。
新種発見という希望はありますが、自由な世界で男は灰色の日常を繰り返すだけでした。

しかし、閉じ込められて自由を失った男は、元々あった自由な生活が苦しかったことをあまり考えません。
閉じ込められているという不自由さから解放されることばかりを考えます。
そして、ただひたすらに自由を求め、砂穴から脱出するために、男はありとあらゆる手段を用います。

男が砂穴から脱出することは、本当の自由を手に入れるということなのでしょうか。

「人間にとって本当の自由とは何なのか」を考えさせられます。

安部公房『砂の女』はここが面白い②:“女”の愛郷精神

女はなぜ砂穴の中にある家に住み続けるのか。

女は、砂に囲まれた最悪の環境に慣れているだけではなく、その環境を愛しています。
自分の生活を諦めているのではなく、自分の生活を幸福に感じています。

人は、慣れてしまえば、どんな環境でも普通になっていくのでしょうか。
一種の恐怖を感じる作品かもしれません。

安部公房『砂の女』はここが面白い③:本の題辞

『砂の女』の最初の1ページにこんな言葉があります。

―罰がなければ、逃げるたのしみもないー

安部公房『砂の女』(新潮文庫)より

何のことを言っているのかさっぱり分からないと思いますが、
『砂の女』のラストシーンを読み終わった後、この言葉の意味が分かります。

おわりに:安部公房『砂の女』の感想

世界観がとにかくぶっ飛んでいる作品でした。

砂穴の中に建つ一軒家での暮らしは、現実世界ではあり得ないような話ですが、読み進めるうちにその暮らしを当たり前のことのように感じてきていました。

砂穴から脱出しようと試みる男を応援したり、部落の人に邪魔をされてハラハラしたりと、気づけば物語に夢中になること間違いなしです。
世界中で評価されている作品であることもうなずけます。

そして、読んだ後には、「自由とは何だろう」とか「幸せとは何だろう」のような、哲学的な疑問が浮かび上がってきました。
難しい話に見えるかもしれませんが、正確な比喩が豊富に組み込まれていて、とても読みやすい文体です
自分を深く知ることが出来るいいきっかけになる一冊かもしれません。

気になった方は、是非『砂の女』を手に取って読んでみて下さい!

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