今回ご紹介する小説は貴志祐介さんの『新世界より』です。
1000年後の未来。超能力。未知の生物。
第29回日本SF大賞も受賞した王道の「SF小説」です。
が、ただのSF小説と侮るなかれ。
タイトルの由来にもなった”1000年後の新世界”を描く、SFの要素。
少年少女達の微笑ましくも激しい恋愛小説の要素。
未知の土地、未知の生物達との接触を描いたホラーの要素。
これら全ての要素を網羅した、病的なまでに美しく、エロティックかつグロテスクな独特の世界観。
読後、貴方の胸には何とも言えない鳥肌の立つような「…怖い。けど、面白い…」という思いが、まるで水に溶けていく絵の具のように「すーーーーっ」っと広がっていく事でしょう。
ブログ運営者より:
この記事の本文は読書家ライター・楽観さんに書いて頂きました!
小説『新世界より』のあらすじ
『新世界より』のあらすじ①:1000年度の世界とは
1000年後の日本。
そこの世界に住む渡辺早季という一人の女性の述懐の手記という形で物語は進行していきます。
その「新世界」では人々は「呪力」と呼ばれる超能力を身につけており、「和貴園」と呼ばれる小学校、「全人学級」と呼ばれる中学校・高校で「呪力」を正しく身につけていく術を学んでいきます。
今我々が住んでいる世界は「先史文明」と語られ、1000年前に何らかの理由で崩壊した事になっています。
先史文明の崩壊後、地球人口は著しく減り、日本全国合わせても人口はわずか5〜6万人。
北海道から九州まで、合わせて9つの町しか存在せず、科学文明が衰退しているため、町同士の交流は殆どありません。
早季が住む「神栖66町」は人口およそ3000人強。
八丁標という注連縄で外界と区切られ、子供達は「八丁標」の外には決して出てはならないと言いつけられて育てられます。
貨幣は存在せず、人々は助け合いと無償の奉仕を基盤とした、自給自足に近い生活を送っています。
「バケネズミ」と呼ばれる人間並みの知能を持ったネズミを服従させ、貢物と役務を提供させる代わりにその生存を保障しています。バケネズミのなかには人間に服従しない種も存在します。
早季とその同級生達は、そんなのどかな世界の中で「呪力」を操る術を勉強していきます。
自分の持つ「呪力」の威力がどれほどのものなのか、この先勉強を続ける事によってどれほどの強さを持てるのか。
強い「呪力」を身につけた未来の自分を想像して心を躍らせる早季達。
我々が「超能力」と呼んでいる能力を普通に有し、しかも勉強や訓練によってその力を高められる事が判っていたら…。
そりゃワクワクするし、心も躍りまくる事でしょう。出来るなら私も「呪力」が欲しいものです。

呪力にバケネズミ…。
独自のSF世界観を楽しめそうだな。
『新世界より』のあらすじ②:暴かれた真実
「和貴園」を卒業した早季達は「全人学級」へと進学します。
呪力を試す訓練の一環でもある搬球トーナメントを終えると、全人学級で最大と言っていいイベント、夏季キャンプが近づいてきます。
夏季キャンプとは、子供達だけでカヌーに乗って利根川を遡り、テントを張って七日間過ごすというスリルに満ちたもの。
ただでさえ「キャンプ」とか「テント」とか、心躍る上に、うるさい大人も不在で子供達だけの世界。ワクワクするなという方が無理ですね。
「風船犬」「悪魔のミノシロ」等という、話しだけは聞いた事があるものの、これまで見た事のない未知の生物に遭遇するかも知れないという、恐怖と興奮が入り混じった期待も合わせ、早季達は出発します。
「悪魔のミノシロ」とは「ミノシロモドキ」とも呼ばれ、ミノウミウシが進化したと言われる「ミノシロ」に非常に良く似た生物らしいですが、早季達は見た事がありません。
「ミノシロ」自体は既知の生物であり、早季達は「ミノシロモドキ」を捕獲しようと計画します。
キャンプに出て2日目の昼。
早季達は一見ミノシロに似てるようで全然違う、これまでに見た事もない奇怪な生き物に遭遇します。
これこそ、追い求めていたミノシロモドキでした。
催眠術をかけてくるミノシロモドキに苦戦しながらも、早季達はミノシロモドキを捕らえます。すると。
「破壊行為をやめてください」
なんと、ミノシロモドキが日本語を話し出します。
「あんたは、誰?いったい何なの?」
驚いて思わず問いかける早季。その問いに対するミノシロモドキの答えは更に意外なものでした。
「わたしは、国立国会図書館つくば館です」
なんと、ミノシロモドキの正体は2129年までに出版された約4000万冊の本をデータ化して記録しているアーカイブの一種、正式名称を「Panasonic 自走型アーカイブ・自律進化バージョンSE-778HA」という、記憶媒体型アーカイブマシンだったのです。
そして、早季達はこの記憶媒体型アーカイブマシンから「1000年前に何が起きたか」「如何にして先史文明が滅んだか」の詳細を知ってしまいます。
そして、先史文明崩壊のきっかけとなってしまった2つの謎の存在、「悪鬼」と「業魔」の正体も…。
ついに、パンドラの箱を開けて真実を知ってしまった早季達。約10年以上にも渡る早季達の悲劇の物語が始まります。

まさに物語の始まりといった様相…。先が気になるところだな。
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小説『新世界より』はここが面白い
- 重厚かつ壮大なストーリー!頁数1,000を越える超大作!
- 「そうだったのか!」最後まで読み進めれば必ず繋がる伏線の数々!
重厚かつ壮大なストーリー!頁数1,000を越える超大作!
『新世界より』は35歳になった早季が、12歳からの記憶を辿って1つ1つの出来事を述懐し、手記を書く、という形をとっています。
悲劇の事件を二度と再び起こす事のないよう「1000年後の同胞に宛てた手紙」の意味も込めて書かれた早希の手記。
それは、1つ1つの出来事を事細かに伝えると同時に、それに寄り添う人々の心情もしっかりと描かれてます。
このきめ細かい記述が、この壮大な物語に重厚さも加えてくれるのです。
「そうだったのか!」最後まで読み進めれば必ず繋がる伏線の数々!
物語の序盤は「うーん。読みづらい…」と感じる方もいらっしゃるかも知れません。
早季が記憶を辿って書いている手記という形上、時系列が飛び飛びになっている事が理由の1つ、もう1つは一読しただけでは意味があまり飲み込めない専門用語がバンバン出てくるからです。
「呪力」に関する用語。バケネズミ。ミノシロモドキ。悪鬼。業魔。
ですが、ほんの少しだけ我慢して読み進めて下さい。
序盤を過ぎる頃からこれらの用語1つ1つの意味が徐々に解明され、序盤から網の目のように張られた伏線が1つずつ回収されていきます。
中盤から終盤に差し掛かる頃には「そ、そうだったのか!」と唸る事受け合いです。
そして、最終盤。
縦横に張られた伏線のうち、最も太く重要な伏線がものの見事に回収され、貴方はこの小説を読んでいる間何度も漏らした「うーーん」という感嘆の言葉のうち、最大のものを漏らすことになるのです。
おわりに:小説『新世界より』の感想
『新世界より』はアニメ化もされてますので、かなり有名な作品だと思います。
私は個人的にアニメより小説の方が好きですね。
自分で思ったとうりの情景を勝手に頭の中で描く事が出来ますし。
感想を端的に述べてしまえば、「面白い!」の一言に尽きますね。
なにしろ頁数が多く、長編の部類に入りますが、途中ダレる事もなく一気に読み進ませてくれる小説です。
その原動力は、きめ細かな記述によってもたらされる「リアリティ」でしょう。
SFとは「サイエンス・ファンタジー」の略ですが、『新世界より』を評するなら「SRF」、「サイエンス・リアル・ファンタジー」という言葉がしっくり来ます。
今から1000年後。もしかしたら本当に私達は「呪力」によって支配された世界に生きているかも知れません。


読みごたえがありそうだ。
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