小説『ペンギンハイウェイ』のあらすじ&感想【少年の探求と淡い恋】

ぼくはたいへん頭が良く、しかも努力をおこたらずに勉強するのである。
だから、将来はきっとえらい人間になるだろう。

森見登美彦『ペンギン・ハイウェイ』(角川文庫)より

なんとも自信にあふれた独白で、この物語は始まります。

森見登美彦の長編SF小説『ペンギン・ハイウェイ』。
第31回日本SF大賞受賞作品で、2018年にアニメ映画化されています。

私がこの作品を読もうと思ったきっかけは、アニメ映画のキービジュアルを見たことでした。

少年とお姉さん、そしてペンギンたち。
爽やかさとほのかなノスタルジックを感じました。

主人公は小学四年生の少年です。
毎日起こったこと、気になったこと、学んだこと、すべてをノートに書き留める、好奇心と探究心、そして向上心の塊のような少年です。

この小説は彼がノートに記した日記のようなものという体で進んでいきます。

全編を通してのやや堅苦しい語り口調も、小学四年生の少年のものだと思うと子供が一生懸命背伸びしているように思えて可愛らしいのです。

じっさい、彼は年相応の可愛らしさと、同時に賢さゆえの小憎らしさを持ち合わせています。
最初の数ページで、読者は論理的で理性的、それでいて幼さの残る「ぼく」の語りに引きつけられてしまうでしょう。

この記事ではそんな『ペンギンハイウェイ』のあらすじと感想をネタバレなしでお届けします!

ブログ運営者より:
この記事の本文は読書家ライター・緋衣箒さんに書いて頂きました!

『ペンギンハイウェイ』のあらすじ

ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)

『ペンギンハイウェイ』のあらすじ①:「ぼく」はペンギンに出会った

なぜ「ぼく」がこの日記のような物語を綴りはじめたのか。

それは彼の住む郊外の街に突然、とんでもない研究対象が現れたからです。
それが「ペンギン」でした。

ある朝「ぼく」の通学路にある空き地に現れたのは、ペンギン。
文字通りペンギンという生物で、しかもそれらは突然現れ、そして突然消えるのです。

『ペンギンハイウェイ』のあらすじ②:お姉さんはペンギンを出した

その後も「ぼく」の住む街にペンギンは出現します。
「ぼく」はペンギンの出現について研究をはじめ、それを「ペンギン・ハイウェイ研究」と名付けます。

そんな彼の目の前で驚くべき事が起きます。

「ぼく」と親しくしている、歯科医院のお姉さんがペンギンを生み出したのです。
お姉さんは「ぼく」に向かって言います。この謎を解いてごらんと。

「ぼく」はペンギン・ハイウェイとお姉さんの関係を研究し始め、実験を行いますがなかなか研究は進みません。

『ペンギンハイウェイ』のあらすじ③:謎は深まり、そして研究は終わる

「ぼく」は探検仲間であるクラスメイト・ウチダ君と共にペンギン・ハイウェイ研究を進め、さらにクラスメイトのハマモトさんが行っている、草原に現れた謎の物体〈海〉の研究にも参加します。

ある時ペンギンと〈海〉に関係があることが明らかとなり、「ぼく」たちの研究対象はますます謎めいたものとなります。

さらにペンギンを出すことのできるお姉さんも研究に参加することになり……。

生まれ続けるペンギンに、不思議な活動を続ける〈海〉と、新たに現れた奇妙な生き物「ジャバウォック」。
…そしてどこか神秘的な存在であるお姉さん。

やがてすべての謎は一つに集結し、「ぼく」とお姉さんは答えにたどり着くのでした。

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『ペンギンハイウェイ』のおすすめポイント

ペンギンハイウェイ①:「ぼく」の視点で語られる平凡な世界の面白さ

ストーリーの主軸はペンギンを中心とした不思議な事件ですが、「ぼく」の日常も、興味深い事柄であふれています。

まず、十人十色な登場人物たち。

  • 茶目っ気のある大人でつかみどころのない、ミステリアスなお姉さん。
  • 探検仲間の寡黙なウチダ君。
  • クラスのいじめっ子・スズキ君。
  • チェスが強く大人っぽいハマモトさん。

また「ぼく」の家族である父、母、妹、そして別居している祖父母もそれぞれが「ぼく」の言葉で鮮やかな人物像として描かれています。
彼らが紡ぐ日常のシーンも、この小説の魅力の一つです。

「ぼく」の日常は決して平和ではありません。
「ぼく」を目の敵にするスズキ君率いるスズキ君帝国からの攻撃も発生します。
『ペンギン・ハイウェイ』は少年少女の日常的な戦いを描いた物語でもあります。

小学生らしい青春、とでもいうのかもしれません。
それが私の胸にノスタルジアを呼び起こしました。
ああ、こういう子いるよね、こういうことあるよね、とクスリと笑えるシーンもあります。

そういった些細な出来事を、「ぼく」は冷静に観察し、自分なりの視点で語ります。
彼の少し独特な視点で語られる日常の景色は、色鮮やかで魅力的です。

ペンギンハイウェイ②:「ぼく」とお姉さんの不思議な関係

物語のキーパーソーンであるお姉さんは、「ぼく」が通う歯科医院で働いています。
二人は親しくしており、カフェでチェスをしたり、「ぼく」の日々の研究について語ったりします。

「ぼく」はお姉さんを「とても興味深い」と評し、彼女を研究しています。
お姉さんがペンギンを生み出せることがわかってから、二人の仲はさらに親密なものとなります。

「ぼく」はお姉さんを研究対象として見ながら一人の人間として大切にしていますし、お姉さんのほうも「ぼく」をナマイキと評しながら彼やその友人を危機から救ったりします。

大人と子ども。女と男。研究対象と研究者。
運命めいた、それでいて海の泡のように簡単に消えてしまいそうな二人の関係性は、どこか神聖にすら感じられます。

そんな二人に訪れる結末はどういったものなのか、ぜひその目でお確かめください。

『ペンギン・ハイウェイ』の感想

この小説は「ぼく」ことアオヤマという少年の日記のようなものです。

だからか、私は「ぼく」の経験した数か月の冒険を追体験したような心地になりました。

一人の少年のほんの数か月間の、けれど濃密な日々を追っていきながら、色んな知識や考え、不可思議な現象に触れ、まるで子どもの頃に戻ったようなワクワク感を味わいました。

一つの街で起こった冒険と探求の日々、それを読み終わったとき。
「ぼく」とお姉さんがたどり着いた答えを見届けたとき。

私の胸は寂寥感と、「ぼく」をはじめとする登場人物たちへのいとおしさに包まれました。

とても不思議で、小さな宝石のようにきらきらしていて、ほんのりとした寂しさを残す物語。
ぜひ、ご一読くださいませ。

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