とにかく結末が凄いです。もうホント「脱帽」の一言です。
甘酸っぱい恋愛小説でありながら、第58回日本推理作家協会賞の候補作となった異色の小説です。
まだCDもなかった時代、日本がバブルに浮かれ出した時代のリアルな等身大の恋愛模様。
あの頃を知っている人達には「そうそう、そうだった!」と、あの頃を知らない人達には「そうなんだ!楽しそう!」と思わせる、珠玉の一冊。
確実に貴方を引き込んでしまう事、間違いなしです。
そして、驚天動地の結末。恋愛小説でありながら最高傑作のミステリー。
まだ小説にハマっていない方、この本を読んで貴方も「イニシエーション」を通過してみませんか?
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この記事の本文は読書家ライター・楽観さんに書いて頂きました!
小説『イニシエーションラブ』のあらすじ
『イニシエーションラブ』のあらすじ①:ラブストーリーは突然に
時は1986年、場所は静岡市。静岡大学に通う鈴木夕樹は今でいういわゆる陰キャ。この鈴木君が人数合わせで誘われて初めての合コンに参加するところから物語は始まります。
鈴木君、「合コンで出会うような、性格の軽い女とは付き合いたくない」とあまり乗り気ではないのですが、この合コンで運命の出会いをしてしまいます。
その相手が成岡繭子。20歳の歯科衛生士でショートカットのよく似合う、小柄でほっそりとした可愛らしい女の子です。
鈴木君は合コンの席上でもそのメガネを掛けた真面目そうな風貌から「NHKのアナウンサーみたい」と言われてしまうような堅物男子ですが、なぜか成岡さんの方が鈴木君を気に入ってしまった模様です。
トイレで中座した鈴木君に「二次会、鈴木さんも一緒に行ってくれますよね?」と小声でささやくのです。
初めての合コンを大いに満喫した鈴木君でしたが、同時に「今日のような事は二度とない」と諦めてしまい、眠りにつくのでした。

この話は、時代背景も楽しめそうだ。
『イニシエーションラブ』のあらすじ②:二人は恋人
初めての合コンから3週間。合コンで打ち解けた男女8人は海へと出掛けます。
合コン当日から成岡さんの事が頭から離れなかった鈴木君にとっては又とないチャンスです。
そのチャンスにもなかなか踏み出せない鈴木君ですが、なんと成岡さんの方から電話番号を教えてくれます。
携帯など無かった時代、鈴木君は成岡さんの家電(!)を必死に覚えます。
海にいった日から更に1週間、鈴木君は意を決して成岡さんをデートに誘います。
というか「デートにも誘って欲しいなと思ってたんですけど」と言われ、ようやく決心がつくという。どこまでも奥手な鈴木君。
デート当日も当然成岡さんの主導で進んでいきます。
当時静岡に本当にあったという金ギョーザをほおばりながら、成岡さんは鈴木君に「もっとおしゃれをした方がいい」とアドバイスをくれます。
すっかりその気になった鈴木君、メガネをコンタクトに変え、新しい服を買い込み、車の免許まで取りに行ってしまいます。
その努力が実ってか。鈴木君は成岡さんに意を決して告白、無事に結ばれます。
時はいつしか過ぎてクリスマス。
恋人同士となった二人はターミナルホテルでルームサービスのシャンパンを楽しみながら「地上最強の恋人同士」である事を実感するのでした。

こういう青春、憧れる……ちょっとだけね。


恋愛の話だし、このまま仲良くやってほしいな。
『イニシエーションラブ』のあらすじ③:上京物語
大学を卒業して地元に就職した鈴木君でしたが、ある日突然東京への移動を命じられます。
彼女と居たいが為に大手企業の内定を蹴ってまで地元静岡に就職した鈴木君でしたが、運命は非情です。
ですが、東京へ行くと言うことはいわゆる幹部候補生ということでもある訳です。
悩んだ挙句、鈴木君は東京に行く事を決心します。
東京に行ってからも鈴木君は懸命の努力を続けます。
見る見る度数が減るテレホンカード(!)を買い込み、高速は金が掛かるからと下道で静岡まで帰り、懸命にマユに尽くそうとします。
ですが、やはり遠距離恋愛。まして鈴木君からすれば「俺はこんなに金を使って努力してるのに」という気持ちもあり、二人はかつては無かったような下らないすれ違いから喧嘩をしてしまいます。
慣れない東京生活、大好きな彼女とのすれ違い、鬱々として毎日を楽しめない鈴木君を救ったのはやはり女性でした。
石丸美弥子。東京で出会った会社の同僚、慶応卒のいわゆる都会的な女性です。
小柄でほっそりとしてボーイッシュ、いわゆる「女の子」なマユとは全く正反対のグラマラスな女性です。
鈴木君、マユに悪いと思いながらも次第に石丸さんに惹かれていってしまいます。
石丸さんの方はというと、これはもう確信犯に近いです。
どうやら最初から鈴木君に惚れていた様子です。
彼女が居ながら他の女性に目移りしてしまう、これはもう男の性と言うしかないでしょう。
本当に男ってのはバカな生き物です。
マユの事を嫌いになった訳ではもちろん無い、鈴木君はそれからも努力を重ね、マユとの逢瀬を重ねます。
しかし、事ある毎に東京と静岡を往復するのはいくら若いからと言っても体力的には至難の業です。
唯一の心の拠り所であったマユとの逢瀬ですが、同時にそれは鈴木君も知らないうちにいつしか鈴木君の心と体を蝕んでいきます。
そして10月のある日。決定的な出来事が起こります。



というかコレ、どんな結末になるんだろう?
小説『イニシエーションラブ』はココがおすすめ!
※画像はイメージです
- 「あの頃」を思い出させてくれるリアルな描写
- ついつい感情移入してしまうキャラクター達
- 等身大の「青春」がここにある
「あの頃」を思い出させてくれるリアルな描写
物語は1986年から1987年に掛けて進んでいきます。
まだ携帯もなくCDも無い時代。連絡ひとつ取るにも四苦八苦、一度家を出たら待ち合わせもままならない時代。
そんな時代の空気を見出しのタイトルにもなっている曲名やところどころに散りばめられたキーワード達が見事に醸し出してくれています。
男女7人夏物語。富士通のFM-7。クリスマスのターミナルホテル。国電、じゃなくてJR。
「あの頃」を知る大人達が一瞬にして「あの頃」に戻り、あの甘酸っぱい日々をノスタルジーと共に思い出させてくれる事請け合いです。

ついつい感情移入してしまうキャラクター達
主人公鈴木君のもたもたっぷりからの見事な変貌振り、小柄でほっそりとしたボーイッシュな彼女マユ、その二人のなんとも微笑ましい恋愛っぷりはもちろん、脇を固める登場人物達もそれぞれ魅力的です。
鈴木君に「東京の女」を鮮烈に感じさせる石丸美弥子、その美弥子を巡って恋敵となる同僚海藤。これら登場人物のうち誰かが、「あの頃の貴方」なのです。

同性ってこともあるけど、俺は鈴木さんがどんな選択をするのか気になるな。
等身大の青春がここにある
いつしか時は過ぎ大人になって、人は恋への情熱を失っていきます。
収入が上がっていき、便利なものが溢れ、人は恋する事への努力を忘れていきます。
そういった物全てに対して情熱を持てるのが青春時代なのです。
小遣いを削り、食費を切り詰め、高速も使わずに下道を使って東京から静岡まで週一回は必ず帰る。
形は違えど、そういった恋の努力を「バカバカしい」と切り捨てず、端から見れば「アホか」と思うぐらい愚直に向き合う。
貴方が過ごしたかけがえの無い青春が、この本には詰まってます。
おわりに:小説『イニシエーションラブ』の感想
物語の前半部分、鈴木君とマユがデートを重ね、無事結ばれて幸せな日々を過ごすまでは「鈴木君、頑張れ!」と思うと同時に、「良かったね!」と暖かい気持ちで読み進める事が出来ます。
上京後の鈴木君の苦悩からラストまでは、何とも言えないもやもやした鈴木君の気持ちがこちらにも乗り移ったかのような感じで、ハラハラした気持ちで読んでおりました。
が、それはあくまで一回目の話し。
一回目のラストまでを読み終えた後、「…..??」という気持ちが確実に芽生えます。ここからがこの小説の真骨頂です。
二回目は一気にラストまで読み進めて下さい。
二回目のラストまで読み終えた貴方を待ち受けるのは…
王道の青春ストーリーにして驚天動地のミステリー、貴方も一緒に「あの頃」に浸ってみましょう!