小説『氷菓』のあらすじ&感想【キャラも魅力の青春ミステリー】

米澤穂信先生による”〈古典部〉シリーズ”。
その始まりとなる小説『氷菓』のご紹介です!

この作品はアニメ化もされて大人気を博しているので、ご存じの方も多いのではないでしょうか?

未読の方はぜひ手に取ってみて欲しいので、今回は核心的なネタバレなしで、あらすじや感想をご紹介しますね。

また、『氷菓』は”青春ミステリ”とも言われるように「人死にのない謎を”古典部”の高校生たちが解決していく」のが最大のウリなのですが…。

アニメが大人気になったことからも分かるように、実は登場するキャラたちがすごく魅力なんです。
なのでこの記事では、『氷菓』に登場する主要キャラもご紹介しようと思います!

小説『氷菓』はキャラが”超”魅力的!

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『氷菓』には多数の魅力的なキャラが登場しますが、主要キャラは以下の4名です。

  1. 折木奉太郎
  2. 千反田える
  3. 福部里志
  4. 伊原摩耶花

全員が同じ高校の1年生。
そして”古典部”のメンバーとなっています。

『氷菓』のキャラ①:折木おれき奉太郎ほうたろう

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『氷菓』における主人公。
当人は不本意ながら、いわゆる”探偵役”を担います。

面倒ごとを避けたがる性格で、一人読書することを好む少年。
本人曰く「省エネ主義」とのこと。

そのモットーは口癖からも窺えます。

「やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことは手短に、だ」

米澤穂信『氷菓』(角川文庫)より

青春真っ只中の高校生とは思えない冷めっぷりが良いですね。
……しかし”やらなければいけないこと”はきちんとやると明言する辺り、そんじょそこらの面倒くさがりとは違うのかもしれません。

単に怠惰なキャラではなく、「効率重視の思考」って感じ。
そのへんも”探偵役”には向いていると言えそう。

成績が良いわけではないのに、何故か推理力は抜群。
常人では思いつかないようなことでも、奉太郎だけは目聡く気付きます。

地味で冴えない少年かと思いきや、肝心なところで冴え渡る隠しきれぬ知性。
つかみ所がないところも魅力なのでしょう。

……何だかんだ言って、とてもお人好しなところも素敵です。

本人は”薔薇色”ではなく”灰色”を望んでいる模様。
果たして奉太郎が望む”灰色の高校生活”は続くのだろうか?(続きません)

ハル
ずいぶんと捻くれたやつですね。
ラウ
……あなたが言うかな?
捻くれてて、つかみ所がなくて、天才肌で、他人に無関心。
そのくせお人好し。……誰かさんにそっくりよ?

『氷菓』のキャラ②:千反田ちたんだえる

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奉太郎の”灰色の高校生活”を、出会った瞬間に正面からぶち壊してみせた少女。

純真無垢。天真爛漫。好奇心旺盛。
人懐こく、パーソナルゾーンが狭すぎるため、鼻が触れ合いそうなくらいまで、平気で奉太郎に顔を近づけたりする。

……並べ立てるとすごくあざとく見えてきますが、これで無自覚だから手に負えない。

さらに実家は地域でも有名な豪農(広大な土地や財産を有する農家さん)であり、なんとお嬢様という設定まで追加。
口調が誰に対しても敬語であることや、無邪気に見える振る舞いの中にも気品が窺えることからも育ちは良さそうです。

さらにさらに、記憶力抜群で成績も優秀。料理も超上手い。
あと嗅覚や聴覚が人並み外れて良く、この特性が謎を解くピースになったりもする。

……設定盛りすぎのキャラと言えなくもないが、彼女が動くだけでほんわかするので文句はありません。

「わたし、気になります」

米澤穂信『氷菓』(角川文庫)より

上記は千反田の口癖であり、省エネ主義の奉太郎に頭脳労働を強いるための殺し文句。
顔を近づけてこの呪文を唱えるだけで、奉太郎の”灰色”は瓦解します。

彼女なくして『氷菓』の物語は始まりません。

ラウ
可愛い子ね。
しかも素直で気品もあるって、奉太郎くんがタジタジなのも無理ないわ。

『氷菓』のキャラ③:福部ふくべ里志さとし

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奉太郎とは中学時代からの友人だが性格は真逆で、青春を謳歌する姿勢に満ち満ちています。

お調子者で、有ることも無いこともつらつらとしゃべり倒す癖があるようです。
しょっちゅうジョークを口にしては奉太郎に突っ込まれたりあしらわれたりしているが、本人はジョークに対してどうやら信念がある模様。

「ジョークは即興に限る、禍根を残せば嘘になる」

米澤穂信『氷菓』(角川文庫)より

今その時を楽しむという里志なりの考えなのかもしれません。

とはいえ、”即興”でジョークを連発できることからも分かるように、その知識量は中々のものでジャンルも多岐に渡ります。

「いや、ホータローも手伝ってよ。僕もできるだけのことはするけど、なといってもデータベースは結論を出せないからね」

米澤穂信『氷菓』(角川文庫)より

「データベースは結論を出せない」はもはや里志の口癖。
自分を”データベース”と見なせるのは自信の現れであり、実のところ奉太郎へのコンプレックスも絡んでいるように思われます。

根底には「推理や思考では奉太郎に適わないけど、せめて情報量だけは……」という考えがあったりなかったり。

何にせよ「”データベースの里志”と”知識はないが思考力抜群の奉太郎”のコンビ」は鬼に金棒とも言えそうですね。

ハル
ちょっと騒がしそうだけど、ムードメーカーなんだろうな。
……身の程を弁えてか「データベース」って言ってるのも好感持てる。

『氷菓』のキャラ④:伊原いばら摩耶花まやか

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奉太郎以外の人間には無害で優しい女の子。
なぜか奉太郎だけに厳しく、口もなかなかに悪い。

「あれ、折木じゃない。久しぶりね、会いたくなかったわ」

米澤穂信『氷菓』(角川文庫)より

 

(里志の「ホータローは時々抜けてる」発言に対し)
「時々? ふくちゃん、過大評価じゃない?」

米澤穂信『氷菓』(角川文庫)より

誰にでも優しい女の子にこんな扱いをされようなものなら、一般的な男子高校生なら心が折れそうなもの…。
奉太郎には強く生きて欲しい。

とはいえ奉太郎も負けじと言い返しているので、これはこれで良いコンビなのかもしれないです。

ちなみに里志に惚れており、中学時代に何度も・・・告白しているが返答を曖昧にされている状態。
里志への想いを口にすることにさして恥じらいはない様子で、童顔(原作認定)ながら何だか男気すら感じられます。

古典部で出会った千反田とは仲が良く「ちーちゃん」と愛称で呼んでいる。
突拍子もない行動が絶えない千反田を放っておけないようで、しっかり者の伊原が世話を焼くこともしばしば。

ラウ
芯のしっかりした子なのね。
里志くん、こんな良い子に告白されてなぜ応えてあげないのかしら……。
満更でもないと思うけれど、理由があるのかな?

小説『氷菓』のあらすじ(ストーリー)

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小説『氷菓』のあらすじ①:奉太郎の”省エネ主義”の天敵

高校に進学した奉太郎へ届いた一通の手紙が事の発端。
差出人は奉太郎の実の姉・供恵ともえです。

インドア派の奉太郎とは対照的に放浪癖のある供恵は現在ベナレスに滞在中の様子。
(浅学の僕は「ベナレスってどこだよ」と思いましたが、どうやらインドの都市のようです)

旅の話もそこそこに、供恵の手紙は本題へ移っていきます。

奉太郎と同じ高校に通っていた供恵は当時「古典部」に入部していたんだそう。
どうやらその「古典部」の部員がゼロになり、誰か入らねば廃部になってしまうようで……。

無事高校生になったあんたに、姉として一つアドバイスをしてあげる。

古典部に入りなさい。

〈中略〉

奉太郎、姉の青春の場、古典部を守りなさい。とりあえず名前を置いておくだけでいいから。

米澤穂信『氷菓』(角川文庫)より

もはやアドバイスではなく命令です。

省エネを主義とする奉太郎としては部活に価値を感じるはずもないわけですが、幼い頃から姉に頭の上がらない奉太郎は仕方なく入部することを決めるのでした。

小説『氷菓』のあらすじ②:部員ゼロのはずの「古典部」に先客が?

かくして入部届を提出し、部室の鍵を借りた奉太郎は放課後、部室として使われている「地学講義室」を訪れます。

鍵を開けて(これ、重要です)、部室へ入るとそこには既に一人の少女がいました。
少女の名は千反田える。

話を聞くと、どうやら千反田も古典部へ入部希望とのこと。

部員がゼロでなければ古典部は廃部を免れる。
自分が無駄足を踏んだことを悟った奉太郎は自己紹介もそこそこに、部室を去ろうとします。

ところがここで、一つの謎が浮かび上がったのです。

  • 千反田が部室を訪れた際、部室の鍵はかかっておらず普通に入室できた。
  • しかし奉太郎は確かに「鍵を開けて」入室した。
  • ということは、千反田は何者かに閉じ込められた状況だった。

「わたし、なぜ閉じ込められたんでしょう。……もし閉じ込められたのでなければ、どうしてこの教室に入ることができたんでしょう」

〈中略〉

「わたし、気になります」

米澤穂信『氷菓』(角川文庫)より

どうやら自分が閉じ込められていたことへの恐怖はないようで、千反田はとにかく理由が気になる様子です。

面倒事を嫌う奉太郎は、適当にはぐらかそうと試みますが好奇心の化身・千反田に対し、そんな誤魔化しが通じるわけもなく……。
ついには顔を寄せられ、大きな瞳で上目遣いに睨まれてしまいます。

そのあまりの気迫に姉の面影すら見た奉太郎は、ついつい折れてしまうのでした。

そしてなんと奉太郎は、この「千反田える閉じ込め事件」をあっさりと解決してしまうのですが…。
答えはぜひご自身の目で確かめてみて下さい。

ちなみに部室は内側から鍵を掛けられない構造なので、「千反田が自分で鍵を掛けて忘れた」という答えは成り立ちません。

おすすめ情報
「千反田える閉じ込め事件」の真相はアニメでも観ることができます。
アニメなら第1話だけで謎が解かれますので、お試しの意味でもおすすめです。

アニメ『氷菓』は『U-NEXT』というサービスで視聴可能です。
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※本ページの情報は2020年10月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにて
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小説『氷菓』のあらすじ③:千反田えるの一身上の都合とは?

奉太郎の知性・推理力を目の当たりにした千反田は後日、話があると奉太郎を呼び出します。

当初、千反田は古典部へ入部した理由を「一身上の都合」と濁していたのですが、その都合を解決するために奉太郎の力を借りたいということでした。

他人の面倒事になど巻き込まれたくないと考えるのが奉太郎の常ですが、やはり千反田には弱いようでその願いを即刻断ることはできません。

果たして奉太郎は千反田に協力し、”灰色”の高校生活から離れていくことになるのか?
そもそも千反田の言う「一身上の都合」とは何なのか?

タイトルでもある『氷菓』にまつわる極上の青春ミステリーが今はじまります!

小説『氷菓』のあらすじ④:4人の個性的なキャラが集った”古典部”

ちなみに、奉太郎と千反田以外にも、里志と伊原が入部する運びとなり、最終的に古典部のメンバーは4人となります。
(里志は純粋に面白がって入部、伊原は里志が入るなら自分もと入部しました)

『氷菓』事件の謎も、この4人で追っていくことになります。

ご紹介したようにこの4人は揃って個性的かつ魅力的です。
4人がそれぞれの推理を発表し合うシーンもあり、これがまた個性豊かで面白い。

人死にのない謎、ストーリー、そしてキャラ同士の関係や掛け合いも素晴らしい小説となっております。

おわりに:小説『氷菓』の感想

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  1. ラノベ的要素を盛り込んだ極上のミステリー
  2. キャラたちの信念が光る。感化されずにいられない。
  3. ”氷菓”というタイトルに込められた意味を知ったときあなたは…

『氷菓』感想①:ラノベ的要素を盛り込んだ極上のミステリー

『氷菓』のジャンルはミステリーですが、青春ミステリーとも言われます。

これはキャラが魅力的で、彼らの掛け合いを読んでいるだけでも高校生達の”青春”を感じられるからでしょう。
単純にセリフを読んでいるだけでも楽しめるので、ラノベ好きの人にはいっそうおすすめしたい小説です。

もちろんミステリー要素も充実していて、あらすじでご紹介した千反田える閉じ込め事件のような”ちょっとした日常の謎”や、本命である氷菓事件のような”人死にはないけど大がかりな謎”まで、奉太郎をはじめキャラ達と一緒に謎解きを楽しめる仕様になっていますのでお楽しみに!

ハル
謎もキャラクターも楽しめて、最高の小説だ。
文章も奉太郎視点だから読みやすいらしいぞ。

『氷菓』感想②:キャラたちの信念が光る。感化されずにいられない。

省エネ主義ながら、「薔薇色の青春」へ巻き込まれていく、折木奉太郎。

「一身上の都合」を解決するため奉太郎を頼る好奇心の化身、千反田える。

軽快なジョークで盛り上げながら「データベース」として活躍する、福部里志。

里志につられて入部しながらも持ち前の真面目さで我が事のように氷菓事件へ挑む、伊原摩耶花。

どのキャラも常識を備えているようで、どこか特徴的な個性を尖らせている面々です。

彼らの言動や行動には、信念と呼べるものが感じられます。

とはいえ、そこはまだ高校生。氷菓事件に挑む中で、そして謎の真相に触れる中で、大いに考えさせられることになります。

……青春って、良いですね。

ラウ
若い子たちが苦難を超えて成長する姿ってたまらないわよねぇ。
何だか自分も人生を考え直さなきゃって思わされるわ。
ハル
ずいぶん遠い目をしてますが、ラウさんもヒト族に換算したらまだ18歳でしたよね……?
まだまだ若いと思いますよ?

『氷菓』感想③:”氷菓”というタイトルに込められた意味を知ったときあなたは…

多くは語りません。

しかし『氷菓』というタイトルには謎の真相にまつわる”意味”も込められています。

”古典部シリーズ”は『氷菓』以降、何作も続いていきますが、氷菓事件に関しては一冊で綺麗に完結されているので、未読の方はぜひご一読下さい!

また、『氷菓』はアニメも大人気です。
僕は原作である小説も大好きですが、キャラを楽しむのであれば、活き活きと動きまわって会話するアニメもすごくおすすめしたいです!

ハル
シリーズを通して名作と名高い小説だそうよ。
まずはその第一弾『氷菓』を満喫してみてね。
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